工学部_研究紹介_2020_日本語版
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准教授山口朋浩研究から広がる未来卒業後の未来像私たちの身の回りには、いろいろな無機材料・セラミックスが使われています。山口研究室では、マイカ(フッ素雲母)やアルミナを中心とした、様々な無機材料の合成や応用に関する研究を行っています。マイカの研究は、信州大学工学部において古くから継続的に行われているものです。現在は、新しい膨潤性マイカ結晶の合成や粒子形態の制御、マイカ結晶の層間にナノ空間を形成した複合体の合成や機能化に取り組んでいます。また、無機塩水溶液を利用する新規ゾルゲル法によるアルミナセラミックプロセスについての研究を進めています。卒業(あるいは大学院修了)後は、セラミックスやガラスに関係する企業のほか、電機・電子関係や化学・材料系のメーカーに就職する学生が多く、研究室の卒業・修了生が様々な分野で活躍しています。信州大学大学院工学系研究科修了。信州大学助手および助教を経て、2011年より現職。研究分野は無機材料化学、セラミックス、粘土科学など。化学を活かして無機材料を創る。セラミックスの材料化学【私の学問へのきっかけ】中学の頃から化学が好きでした。化学を勉強しようと思った一番のきっかけは、やはり「好き」だったから。大学では食品に関係する化学を勉強したいと漠然と考えていました。その後、食品から無機材料に興味が移ったきっかけはまったく覚えていません。現在行っているマイカ(雲母)に関する研究は、信州大学工学部で古くから続いてきたものです。私がこの研究を始めたのは、卒業研究のテーマとして先生から勧められたことがきっかけです。「好き」で始めた化学の勉強と、大学での恩師との出会いが現在につながっています。物質化学科マイカやアルミナといった無機材料は古くから研究・利用されてきたものですが、研究を進める中で、これまでにない組成のものをはじめて合成できたり、これまでにない現象を見出したりすることが多くあります。こういった小さな積み重ねが、これまでの“当たり前”を覆すような新しい発見につながるかもしれません。NaClをフラックスとして用いる方法によって合成した、六角板状の自形をもった膨潤性マイカ結晶試料作製や分析の様子。4年生や大学院生がそれぞれの研究テーマのもと実験を行っている助教影島洋介研究から広がる未来卒業後の未来像再生可能エネルギーの中でも最大の資源量を誇る太陽光エネルギーの有効利用は、人類の喫緊のエネルギー・環境問題の解決に必須であると言われています。一方、太陽光は地域・時間・季節による変動が大きく、時間的・空間的に大きなスケールでの貯蔵・輸送には不向きであるという欠点もあります。そうした課題を解決すべく、影島研究室では錦織研究室と共同して、光触媒材料を用いて水を分解し、太陽光エネルギーを「水素」という貯蔵・輸送に有利な化学エネルギーの形態に変換することが出来る、エネルギー蓄積型の人工光合成系構築に関する研究に取り組んでいます。太陽光と水のみから水素を得ることが出来る「人工光合成系」を構築し、化石資源に依存しない真にクリーンで持続可能なエネルギーシステムを模索することが錦織・影島研究室の研究活動です。光触媒の研究では、材料の物性、表面の状態、それらを評価する様々な分析機器の取り扱いなど、多岐にわたる知識・能力が身に付きます。そうした研究活動やディスカッションを通して、論理的な思考と根性を併せ持った人材を育成します。2018年2月東京大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)取得。2018年3月より現職。専門は光電気化学、材料化学、触媒化学。太陽電池・光触媒等を利用したエネルギー変換型の人工光合成系構築に従事。太陽光エネルギーを化学エネルギーへ変換する⼈⼯光合成系の構築【私の学問へのきっかけ】学部4年生のときは電気化学・表面化学に関する研究を、その後大学院では現在の研究テーマでもある光触媒・人工光合成系関連の研究を行ってきました。ラボスケールで材料をコネコネしていると、大半は大した活性のない「ゴミ触媒」になってしまうのですが、時たま狙い通りor期待以上に面白い挙動を示してくれることもあり、そうした未知の触媒・現象を開拓していく快感に魅入られて今に至っていると感じます。物質化学科↑光触媒粉末を金属上に固定化した「光電極」の評価風景。生成ガス(水素・酸素)の定量分析も行います。ソーラーシミュレーター光電気化学セル↑太陽光スペクトル(左軸)と各種光触媒の光吸収特性(右軸)。可視光の大部分を吸収可能な光触媒材料の開発は変換効率向上へ向けた重要な課題の一つ。16

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