工学部_研究紹介_2020_日本語版
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アミノ酸変異によって酵素性を上げることに成功した准教授林文隆研究から広がる未来卒業後の未来像林研究室では手嶋・是津・鈴木(清)研究室とともに,アクアイノベーションを実現する機能性無機結晶の研究に取り組んでいます。具体的には,海水から選択的にリチウムなどの希少有用資源を回収する、あるいは放射性核種などの汚染物質を選択的に吸着除去する材料を研究しています。固体化学を基盤として,ナノ空間構造をデザインすることで無機結晶の機能を極限まで引き出します。また,最先端計算科学手法や先進計測技術を駆使して,材料のもつ不思議な機能を明らかにしていきます。国内外の研究者と積極的に連携し,実現困難な課題の解決や新しい学問分野の開拓に挑戦しています。無機合成法(フラックス法,水熱法等)を駆使して,多様な機能性無機結晶を育成しています。持続可能な開発目標(SDGs)を実現する材料研究に日夜奮闘しています。最先端の分析機器を利用して独自のデータを取得します。イオン交換体・選択吸着をキーワードに機能性無機結晶の育成とそれらを用いた環境浄化・資源回収に係る化学が学べます。卒業後は環境・エネルギー関連分野を中心に,幅広い分野で活躍することが期待できます。東京工業大学で博士(工学)を取得後,東京工業大学博士研究員・特任助教,信州大学助教を経て,2019年より現職。研究分野は,材料科学,吸着・触媒科学,イオン交換体。SelectiveCaptureofMetal Ions :⾦属イオンを、選択的に、キャッチする!【私の学問へのきっかけ】高校生のころに環境問題に興味をもちました。問題の解決にどれだけ貢献できるか分からないけれど,一生懸命挑戦してみようと奮い立ち,大学・大学院に進学しました。良き指導者・先輩・仲間に巡り会えたことが今の自分の礎になります。研究の醍醐味は,世界で誰も答えを知らない問題に対して自分のアイディア一つで挑戦できること。狙ったとおりの結果が得られたときは身震いするくらい感動します。物質化学科(上図)一,二,三次元ナノ構造をもつ無機イオン交換体の結晶構造(下図)フラックス育成したK2TiSi3O9,Na2Ti3O7,LiMn2O4結晶の走査型電子顕微鏡写真。高品質な無機結晶が得られるため,材料のもつ性能が最大限に発揮される(左図)顕微ラマン分光測定装置(右図)ホール効果・比抵抗測定装置.最先端の分析機器を用いて無機結晶の構造や物理特性を評価できます。准教授水野正浩研究から広がる未来卒業後の未来像水野研究室では、天野研究室と共に生体触媒である酵素を利用して、植物細胞壁に含まれる糖質を食品やエネルギー、新規天然由来材料として活用するための研究をしています。植物は、植物細胞壁を進化させることで植物自身を支えたり、微生物などの侵入に対する防御を行ってきました。一方、微生物は、様々な種類の酵素を作ることで、複雑な植物細胞壁を分解できるように進化してきました。私たちは、微生物が作る酵素の性質を調べるとともに、複雑な構造をしている植物細胞壁構造の解析を行うことで、豊富に存在するバイオマスの有効活用と持続可能な社会の実現を目指しています。生物の中には、数十億年の進化に裏打ちされた究極のモノ作りのシステムが詰まっています。私たちの研究は、そこに目を向け、どうしたら利用できるかを考えることです。まだまだハッとするようなシステムを見つけられるかもしれません。バイオプロセス(生物変換)は、多くの分野で必要とされています。卒業生は食品や化学材料メーカーだけでなく、様々な分野の企業や研究所で活躍しています。また、卒業生との共同研究や社会人博士課程の受け入れが多数あります。⽣物の巧みな⽣存戦略に学ぶ〜酵素で植物細胞壁を利⽤する!〜【私の学問へのきっかけ】小さい頃から自然と触れ合うのが好きで、生命化学に関する勉強ができる農学部に進学しました。大学3年生で受講した“蛋白質の立体構造”に関する講義に衝撃を受け、そのままその先生のラボに入り、博士課程まで進学しました。酵素研究は、食品分野など様々な分野で産業利用されており、まさに工学部が得意とする“ものつくり”にも密接に関係した研究です。一緒に、“真剣”にバイオマス研究しませんか?物質化学科東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員を経て、2017年より現職。専門は、植物細胞壁分解に関する酵素の研究。蛋白質のX線結晶構造解析による酵素の機能解析を中心に研究を進めている。微⽣物植物植物細胞壁(豊富な資源)酵素(⽣体触媒)植物と微⽣物の間で起こる⼀進⼀退の攻防ここにバイオマス利⽤の鍵がある!!酵素(蛋白質)の結晶と蛋白質の立体構造15

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