工学部_研究紹介_2020_日本語版
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准教授岡田友彦研究から広がる未来卒業後の未来像吸着剤や触媒は,わたしたちの生活に役立つ物質として知られています。例えば,吸着剤は有害な有機化合物を効率良く除去することができますし,酸化チタンなどの光触媒は有害有機化合物を太陽光で効率良く分解してくれます。固体の触媒にはこの他にも天然ガスから水素を効率良く製造したり,身の回りの化成品を生産するなど多方面で活躍している物質です。当研究室では,このような吸着剤や触媒の性能を格段に向上させ,省エネ・省資源化に貢献する研究をすすめています。身近な自然現象は実は複雑で未だわからないことがたくさんありますが、この中に画期的な吸着剤や触媒を開発するヒントは眠っています。幸いにも多くの先端的分析機器を利用できる環境にありますので、この恵まれた環境で、分野を超えて様々な研究者と協力しながら、誰も思いつかない発想で高性能な材料をつくっていきましょう。化学に限らず、電気、機械分野においても新しい素材づくりには化学の知識、そして素材の性質を調べるための分析技術が必要です。これらをバランス良く学びながら、素材の本質を掴む方法を身につければ、研究開発の中核を担えることになるでしょう。特に修士課程修了生は、化学・材料系での研究・技術開発職で活躍しています。早稲田大卒後博士(理学)を取得し、早稲田大助手、信州大助教を経て2015年より現職。専門分野は材料化学、表面化学、特定の分子が吸着・触媒される物質表面に興味を抱き研究を展開中。省エネ・省資源に役⽴つ吸着剤・固体触媒【私の学問へのきっかけ】私は高校では化学と地学が好きでした(他はさっぱりだめでしたが。。)大学に進学する目的は高校の理科教員になるためで、一浪を経て大学進学し、教員免許を取得しました。卒業研究では「化学」の研究室を選び、大学院で研究をすすめていくうちに、教科書に書かれていることを教えるよりも、将来教科書に載るような仕事が魅力的であると感じ、この世界に入りました。物質化学科頑丈なシリカカプセルにコバルトナノ粒子を閉じ込める:シリカの表面(右下の電子顕微鏡像)に吸着・触媒活性成分を塗ると、磁石で回収可能な吸着剤・触媒になる天然ガス改質触媒の活性試験装置(上):固体触媒の研究では,触媒を独自に合成するだけでなく,活性試験の装置を組み立て,触媒性能を明らかにします。世界的にも新しい素材が発見できれば、国際学会で発表できる機会もある(下)。教授錦織広昌研究から広がる未来卒業後の未来像自然エネルギーおよび未利用エネルギーの有効利用を促進するための基礎技術は、地球環境の保全・改善を行うためにとても重要です。人や生態系に安全な地球環境を実現するためには、自然の力を利用して環境に負荷をかけない方法で水・大気・土壌の浄化を行うための技術や、化石燃料に頼らずにエネルギーを得る技術が必要です。錦織研究室では、太陽光で機能する光触媒や天然の粘土鉱物による有害物質・廃棄物の分解・無害化にかかわる応用化学研究を行っています。また、光触媒作用を応用した太陽電池や光燃料電池などの新しいエネルギー開発につながる研究も行っています。光触媒に、天然に豊富に存在し吸着力に優れた粘土鉱物をほんの少しだけ添加するのみで、浄化や発電の効率を向上させることが可能です。廃棄物を光触媒で分解して発電する「光燃料電池」は、廃棄物の処理と発電を同時に達成することができる一石二鳥の技術です。卒業生は官公庁の環境部門、水処理、大気浄化関連企業、電気・機械メーカーの環境管理部門等で活躍しています。環境保全や新エネルギー開発において自然の力を利用するという考え方を様々な分野で生かせるような教育をしています。名古屋大学研究機関研究員、信州大学工学部助手、助教、准教授を経て2015年より現職。研究分野は環境光化学、光物理化学、光触媒化学。特に、チタニア系の光触媒化学、無機マトリックス中における有機色素の光物理化学。⾃然の⼒を利⽤した環境浄化から廃棄物を利⽤したエネルギー開発まで【私の学問へのきっかけ】現在では、スマートフォン、タブレットの高性能なタッチパネルなど、光と色に関する技術は欠かせないものになっています。私は、大学4年生の時に、三原色で説明される光と色の化学の現象にとても興味をもち、光化学の研究室に入りました。それ以来、発光や発色、色の変化に関する研究を続けてきました。現在は、光を利用した技術である光触媒による有害物、廃棄物の分解、また、それを応用した発電などの研究を行っています。酸化チタン(チタニア)などの光触媒の作用により、青色の色素を分解・脱色することができる天然粘土鉱物アロフェン粉末の写真(左)と電子顕微鏡(TEM)写真(右)吸着力に優れたアロフェンのナノ粒子を光触媒にほんの少しだけ添加するのみで、浄化や発電の効率を向上させることができる物質化学科5 nm12

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