工学部_研究紹介_2020_日本語版
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教授菅博幸研究から広がる未来卒業後の未来像菅研究室では、薬理活性な光学活性ヘテロ環化合物の合成に関する研究を行っています。有機分子には、不斉中心があり、鏡像関係にある右手系と左手系の化合物が存在します。このような分子は、医薬品にも用いられていますが、右手系が薬であるのに対して、左手系は毒として作用することが多々あります。有機合成の分野では、このような分子をいかに効率的に作り分けるかが重要な研究課題です。同研究室では、医薬品に多く含まれる酸素や窒素などを含む環状化合物(ヘテロ環)をターゲットとして、一方を作り分ける分子触媒や高選択的反応の開発を行っています。有機合成化学は、医薬品や農薬の合成のみならず、新しい有機材料の合成にも広く用いられており、重要な役割を担っています。合成反応では、目的とする化合物以外に副生成物が生成する場合があり、ほしいものだけを効率的かつ選択的に得る手法として新規分子触媒の開発が重要です。化学、製薬および農薬メーカーへ多くの卒業生を輩出しています。有機化学は、分子レベルでものを扱う学問であり、その習得により、低分子や高分子等を問わず幅広い分野で活躍できます。大阪大学大学院理学研究科助手、ミシガン大学博士研究員、信州大学工学部助手、助教授を経て現職。主な研究分野は、有機合成化学。特に有機合成における新規手法および新規分子触媒の開発。有機合成により薬理活性ヘテロ環を作る:新規な分⼦触媒や⾼選択的反応の開発【私の学問へのきっかけ】有機化学の分野や研究室の選択は、父親が有機化学を専攻していたという単純な理由でした。この分野は、大学入試において受験生にとっては、単なる暗記科目でしかないのが現状だと思います。しかし、大学での有機化学は、全く異なっており、特に、研究では理論に基づいて新しいアイデアを試すことができ、正確な分析ができれば、問題を解決する喜びを味合うことがでます。これが、私にとって、何よりも興味深い学問です。物質化学科種々の溶媒や試薬、ガラス器具を使ってドラフト内で反応や蒸留などの実験操作を行い、有機化合物を合成する有機分子が分子触媒(黄色)と配位結合することにより、活性化する核磁気共鳴装置を用いて、有機化合物の3次元構造を決定するワシントン大学化学科博士研究員,大阪大学助手・助教,名古屋大学准教授,信州大学准教授を経て,2018年より現職。研究分野は,材料科学。表界面をキーワードに,化学組成だけでは決まらない機能の創発に取り組んでいます。【私の学問へのきっかけ】実験を通して,固体や液体の中を分子やイオン,電子の状態変化や移動を垣間見たときに感動を覚えました。研究とは,物理モデルを予測し,実験で検証することの繰り返しです。各素反応が集団的に起こると,増幅されて,私たちの目に見える形で表出します。教授是津信行研究から広がる未来卒業後の未来像出力特性と繰り返し耐久性を兼ね備えた,リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池の実現を主眼においた材料・技術を開発しています。溶融塩からの結晶育成(フラックス法)と複合アニオン化表面技術,固体電解質超薄膜被覆技術と理論計算からなる「原子論的異相界面接合技術」により,所望の組成,厚さ,集合構造をもつ表界面を設計・接合することで,イオンや電子をより安全かつ高効率に輸送する異相界面反応場の実証に挑戦しています。原子論的異相界面接合技術とは,材料表面原子に任意の反応種を作用させることにより,反応した表面原子が自発的に理想表面を形成する技術を言います。安くて,より安全で,長期にわたって使用できる,高出力特性を兼ね備えた車載用二次電池ができれば,全車種にハイブリットシステムを標準搭載できるようになるかもしれません。個人の知識には限界があります。バックグランドの異なる研究者による相乗効果は極めて大きいです。産との共同研究から基礎研究が生まれ得る「下学上達」によって,課題の解決に加え,次のステップへの足がかりとなります。原⼦論と完全表⾯創成による機能創発イオンと電⼦をより⾼効率・安全に輸送する異相界⾯を形成物質化学科(a)電池材料の原子模型図(b)電気炉(c)反応解析のための高温X線回折装置(d)熱間プレス装置(e)コイン電池組立。最先端の分析機器を用いて電池材料の合成・構造解析・物性解析ができます。複合アニオン表面創成によるコマンドサーフェス型機能創発:最表面でドライブする新しい機能設計が可能になります。例として,イオン伝導の高速化,電構造変化,表面エネルギー変化,吸着配向制御などが挙げられます。10

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