工学部_研究紹介_2020_日本語版
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教授天野良彦研究から広がる未来卒業後の未来像地球上で最も豊富に存在する有機物である糖質を研究対象にしています。セルロースなどの天然高分子は太陽の恵みを受けて固定されたエネルギーの源です。これを利用すれば、エネルギーはもとより、有機材料、または食品素材まで作ることが可能であり、地域、日本あるいは世界の持続的な発展を支えていきます。化学は地味ですが、今日の近代社会の機能性の材料を通して社会に貢献しています。今後はさらに環境に配慮した技術開発が必要となりますので、卒業生の活躍の場は無限です。博士(工学)1995年より信州大学工学部助手・助教授を経て2005年に教授。2018年4月より工学部長専門:生物工学(特に酵素化学)生体触媒の基礎と応用について研究⽣物の機能を活かしたものつくりを!-遺伝⼦・タンパク質から化学プラントまで-物質化学科天野研究室では、生物化学を基礎として、生物が持つ機能を活かしたものつくりを目指しています。生物には精密な設計図であるDNAとこの情報に基づいて作られるタンパク質があります。この機能性のタンパク質の主体は酵素であり、生体内での複雑な化学反応のすべてにこの生体触媒が関与しています。しかも、生体内の反応はすべて常温常圧で行われているにもかかわらず、非常に早い反応です。この巧みな技を工学的なもの作りに応用すれば、環境に優しいグリーンケミストリーが実現できます。そんな夢の実現にむけて学生と教職員が一丸となって日々頑張っています。昭和14年頃に日本陸軍の依頼により分離された木材腐朽菌、地球上の木質系の有機物分解に必須の地球の掃除屋さん日本に一台しかない高温高圧の連続式水熱反応装置。水だけで有機物の分解を行い、その後の酵素反応を手助けします【私の学問へのきっかけ】私は将来、太陽エネルギーを有効に活用する技術開発に携わりたいと考え工学部を選択しました。いろいろと学んでいくうちに、太陽エネルギーを電気や熱に変えて利用することは良いことですが、貯蔵ができないことが欠点とわかりました。その点、光合成では物質中に化学エネルギーとして蓄えられることや、生合成された物質は必ず生分解されることを学び、生物の持つ機能のすばらしさを知りました。そこで、現在では生物の持つすばらしい機能を利用し、エネルギーや材料を開発したいと考えています。教授新井進研究から広がる未来卒業後の未来像新井研究室では、電気化学的手法、特に“めっき”による機能性材料の開発に取り組んでいます。“めっき”は現在、パソコン、スマートフォンをはじめとするすべての電子・半導体機器に不可欠なテクノロジーであり、ナノ材料や電池材料等の作製法としても期待されています。研究室では、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた「金属/CNT複合膜」や「粗面化金属膜」等の材料を“めっき”により作製し、それらのリチウムイオン電池材料、次世代蓄電池材料、金属と樹脂の異種材料接合材料、ディスプレイ材料、耐摩耗材料、高熱伝導材料等への応用を研究しています。新井研究室では、めっき技術の可能性を追求しています。めっきはマイクロ・ナノサイズの金属材料作製法であり、様々なナノ金属材料や金属複合材料の開発が期待できます。蓄電池の電極材料、異種材料接合材料等、新規機能性材料を提案し、企業との共同研究により実用化を目指します。めっき技術は、めっき専門企業だけでなく、エレクトロニクス関連企業全般で重宝されています。そのため、卒業後は化学メーカーだけでなく、大手家電メーカー、大手電子部品メーカー等への就職が多いのが特徴です。長野県技術系研究員等を経て、2011年より現職。研究分野は電気化学、表面処理。特に、めっき技術を活用した金属/カーボンナノチューブ複合材料の創製や粗面化膜の創製の基礎および応用研究に従事。「電池材料」から「接合材料」まで。めっきによる次世代機能性材料の開発【私の学問へのきっかけ】めっきは非常に分かり易い化学反応です。溶液中の金属イオンが還元反応により金属に変化します。また、溶液中に僅かな添加剤を入れるだけで鏡のような外観の金属膜が作製できます。めっき膜中の水素の新しい利用法の発見や誰も作製したことのない合金めっき技術の開発に成功したのが、より学問を深めようと思ったきっかけです。【写真&写真キャプション】写真フォーマット:上下2つのエリア分。幅約311px程度の画像キャプション文字数めっきで光る!! CNT複合めっき技術を活用した発光体。iPhone7のディスプレイよりも明るいめっきでくっつける!! 粗面化めっき技術を活用した鉄鋼とCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の異種材料接合。地球温暖化ストップを目指す。物質化学科8

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