人文学部_学部案内2020
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From Professors22中国内陸の白蓮教徒の乱ってのをやってるから, おんなじ反乱をやろうか, くらいの気分でした。で, なんかないかな, と探してたら海賊がいたんですよ。これなら目立つぞ!と。それで大学院にいったら, 周りにはアラブの奴隷反乱とか東南アジアの鉱山労働者のリクルートのやり方とか, ウズベキスタンの灌漑とか研究してる人がいたんですね。なるほど知らない話ばっかりじゃないか, これは面白いな, 「東洋史」って間口が広いんだなあ, と思って, そのまま東洋史の人になりました。あとね, 海賊の話で, 当時の中国の行政文書を読んでたんですけど, ずーっと海賊が捕まって処刑される話しか書いてないんですよ。つまんねえな, と思ってたんですけど, あるとき「ベトナムから海賊が来てます」っていう報告書がでてくるんですね。でそれ見た当時の皇帝が「そんなわけあるか!」っつって報告者を左遷しました。そしたら, 次から報告書に「海賊は外国と関係ありません」とか書いてある。で, その数カ月後に, 実際にベトナムから来た海賊が捕まります。おお, 本当の事言うと左遷されるのか, こりゃ面白いな, と。それから「言えること」「言えないこと」ってなんだろうって考えたりするようになりました。「これ, 黙っとこ」みたいの皆あるでしょ?——東洋史をやってると, 研究する国の言語が必要になるじゃないですか。でも, 日本語で研究書って出ているのに, それじゃなくて, 自分で生を読む意義ってあるんですか?——これは, 別に言語の問題じゃなくて, 歴史でもなんでも書いてあることは, 「これの根拠なに?」って考えないといけないよ, っていう話なんですよね。日本語の研究書で「これこれこうですよ, これが当時は普通だったんですよ」って書いてあって, 「ふーん, なるほど」って言ったら, そこで終わりじゃないですか。もう研究なんてしなくていい。でも, 元の史料を見たら, 「これは特殊な事例です」とか書いてあったりする。日本語の研究書がそれを見落としてたりすることだってあるわけ。そういうのを現地の言葉でみて, わかったりしたら嬉しくないですか?「読める読めるぞ!」「騙されなかったぞ!」「めっちゃ細かいことだけど, このことは日本で自分しか知らないんだ」って。——私ははじめ文学系に行こうかと思ってたんです。就職で英語を使いたいなとか考えて。でも結局歴史を選んで, そのときに母親に「歴史行って, 就職どうすんの?」みたいなこと言われたんですよね。貴重な大学生活で, あえて歴史, とくに東洋史を学ぶ意義って, 先生は何だとお考えですか?̶豊岡̶

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