人文学部研究紹介2019-2020
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3主要学術研究業績所属学会と学会での活動経 歴研究から広がる未来と将来の進路●研究分野哲学・芸術論コース●教授 早坂 俊廣中国哲学哲学・思想論分野●現在の研究テーマ1.宋から清にかけての中国思想史,いわゆる「朱子学」と「陽明学」を研究しています。こういう書き方をしますと,何だか朱子や王陽明を「偉い人」と崇め奉っているような印象を与えてしまうかも知れませんが,どちらかと言えばその逆で,彼らのような人たちがどういう脈絡(地縁,人間関係,記録の伝わり方等々)のなかで「偉い人」として描かれるようになっていったのか(専門的な言い方をするならば,「中国近世浙東地方における思想伝承・思想史叙述の様態」)を研究しています。2.いわゆる「朱子学」と「陽明学」では,「心」「性」「命」「理」などといった思想概念が議論の対象となります。こういった彼らの議論のさまを,可能な限り当時の脈絡に寄り添いつつ,しかし現代の日本に生きている自分自身が実感をもって理解できるように研究しています。言語体系も生活環境も大きく異なる「彼ら(未知の友人たち)」との「対話」を重ねていくことを通して,現代の日本に生きている自分の「立ち位置」を見極めたいと考えています。これが,私の考える「比較哲学」の実践です。「中国の古典」を読むということは,空間的にも時間的にも現代日本と大きく隔たった知の世界に触れる体験となります。その体験を通して,未来を見通す力や多文化共生の術が体得されたならば,それらは様々な進路に応用可能なスキルとなりましょう。【著書】*小路口聡(編集)『語り合う<良知>たちー王龍溪の良知心学と講学活動ー』(研文出版 2018年刊)  長年に及ぶ共同研究の成果です。「語らない周夢秀を語るー王龍溪と嵊県の周氏ー」の執筆と,銭明「講学と講会ー明代中晩期の中国陽明学派を主軸としてー」の日本語訳を担当しました。*小島毅(監修)早坂俊廣(編集)『文化都市 寧波』(東京大学出版会 2013年刊)  「東アジア海域に漕ぎだす」シリーズの第2巻です。同巻全体の編集をするとともに,第Ⅱ部第3章「思想の記録/記録の思想-寧波の名族・万氏についてー」とコラム「「中国のルソー」を育んだもの」「寧波の英雄・張煌言」を執筆しました。【論文】*早坂俊廣「劉宗周に於ける意と知-史孝復との論争から-」(『東洋古典学研究』第46集,pp.17-44 2018年10月)  明末の思想家・劉宗周の思想を最晩年の論争から読み解きました。*早坂俊廣「潘平格の生涯と思想」(『東洋史研究』第73巻第2号,pp.101―135 2014年9月)  明末清初の思想家である潘平格を正面から取り上げた本邦初の論文です。日本中国学会,東方学会,中国社会文化学会,広島哲学会,比較思想学会1993年3月広島大学大学院文学研究科(中国哲学・インド哲学専攻)博士後期課程単位取得退学。1993年4月国立北九州工業高等専門学校(一般教育)専任講師。その後,同助教授を経て,2002年4月信州大学人文学部助教授。その後,同准教授を経て,2015年4月から同教授。

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