人文学部研究紹介2019-2020
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30経 歴●研究分野英米言語文化コース所属学会と学会での活動主要学術研究業績研究から広がる未来と将来の進路アメリカ映画史・映像文化英米文学分野●現在の研究テーマ 第二次世界大戦終結後から1950年代にかけてのハリウッド映画を主な研究対象としています。この時代は,ライフスタイルの変化やテレビの隆盛などにより,アメリカの映画産業が危機を迎え,変革を迫られました。そうした変革期のハリウッド映画を,詳細なテクスト分析に基づきながらも,現在では忘れられたり見過ごされたりしている事実を掘り起こし,同時代の歴史的コンテクストに埋め直すことをとおして,新たな相貌を浮かび上がらせようとしています。現在,特に注力しているテーマは,テレビがアメリカ全土の家庭に普及していく50年代前半までにハリウッド映画に現れた変化を,単に映画とテレビの関係にとどまらず,隣接する複数のメディア間の浸透や収束としてとらえ直すことです。 1950年代には,スクリーンのワイド化が進みますが,大きなスクリーンと立体的な音響での鑑賞は,それまでの映画体験よりも遊園地のアトラクションや現代のVRデバイスでの体験に似通っています。また,同時期には劇場テレビという興行も見られましたが,これは映画館のデジタル化後に一般化した非映画コンテンツの映画館での鑑賞と近似しています。このように映画史の研究は現在の映像文化の研究とも結びついていきます。映画の研究には,映画をその表現技法に着目して見る/聴く訓練が必要になります。その習得は,メディアを批判的に読み解く力の習得にもなり,メディア関係の職業を進路に考えている人にとって意義があるでしょう。一方で,英語圏の映画を研究する上で,英語圏の歴史や文化に関する英語文献の読解も必要になるため,異文化間のコミュニケーションや英語を用いた職業を進路に考えている人にとって意義があるでしょう。「テレビを冷やかして 雑誌『ニューヨーカー』が描いた新しいメディア/家電としてのテレビ」 『応用社会学研究』第60号 (2018): 107-122頁.※テレビのカートゥーンから新旧メディアの接触・交渉を考察.「『七年目の浮気』とワイドスクリーン反美学――テレビ時代のハリウッド映画にみる間メディア性」『応用社会学研究』第59号 (2017): 156-183頁.※TVに抗する新技術時代の映画の間メディア性を考察.「テレビに順ずる/抗するハリウッド――「アイ・ラブ・ルーシー」の二度の映画化をめぐって」『応用社会学研究』第58号 (2016): 105-118頁.※人気TVドラマの映画化のプロセスと観客の受容を考察.「遅れて来た男――『花嫁の父』(1950) における観客のいない演技者」『信州大学人文科学論集』第2号 (2015): 197-217頁.※同名の原作小説,雑誌の写真特集,映画の関係を考察.『フィルム・アート――映画芸術入門』D・ボードウェル, K・トンプソン(名古屋大学出版会,2007)共訳.※英語圏でもっともスタンダードな映画学の教科書の翻訳.『映画の政治学』長谷正人・中村秀之編 (青弓社, 2003): 171-218, 362-365頁.共著.日本映像学会およびアメリカ学会に所属しています。日本映像学会では,機関誌『映像学』の編集委員を3期(2012-2018年)務めました。アメリカ学会では,アメリカ学会編『アメリカ文化事典』(丸善出版, 2018) で,アメリカ映画史に関する項目を執筆しました。立教大学大学院文学研究科博士前期課程修了後,立教大学アメリカ研究所に常勤嘱託として勤務.2002年4月より信州大学人文学部専任講師。2008年9月より信州大学人文学部准教授.2006年3月より特定非営利活動法人コミュニティシネマ松本CINEMAセレクト理事. ●准教授 飯岡 詩朗

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