人文学部研究紹介2019-2020
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 この研究冊子に目をとめていただき、ありがとうございます。引き続きページをめくっていただければ、多くの皆様に「ワクワク」していただけること請け合いです。「研究」の「研」は「みがく」こと、「究」は「きわめる」ことです。私たちは、様々な「固定観念」や「偏見」に目を曇らされながら、日々の暮らしを送っています。このこびりついた汚れを磨き落として、物事の実相を見極めようとする営みが「研」です。しかし、磨くだけであれば、まだ表面的な話です。物事の奥底にまで入りこんでいくこと、即ち「究」も必要です。こういう営みが「ワクワク」しないわけがありません。 話は変わりますが、『易経』という書物をご存じでしょうか。儒家の経典でありながら、「占い」の書でもあります。このなかの「賁(ひ)」の卦に、「文明以て止まるは、人文なり」という言葉が記されています。占いの言葉ですから、どうとでも解釈できるわけですが、ここでは「世界に〈文=あやもよう〉と〈明=かがやき〉をもたらしながら、とどまるべきところにとどまる。これこそが人文学の流儀である」と深読みしたいと思います。現在、世界は急速に、大きく変容しつつあります。AI技術や生命科学の劇的な進展は、却って、「人間とは何か?」という深刻な問いを私たちに突きつけています。このような時代にあって、人間ならではの「あやもよう」や「かがやき」を見つめつつ、人としてどこに足場を据え踏みとどまるべきなのかをつきつめていく――今ほど「人文」の精神が求められている時代はない、と言ってよいでしょう。 ところで、「賁」の卦は、「賁は亨る」という占辞で始まっています。「亨(とお)る」は「通じる」の意。本冊子によって、少しでも多くの皆様に人文学部の思いが「とおる」ことを願っています。「人文」の時代です!信州大学人文学部長早坂 俊廣学部長あいさつ

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