研究紹介2019-2020
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片山 茂 准教授 北海道大学で博士号を取得後、カナダ・ゲルフ大学博士研究員を経て、2008年10月より信州大学農学部。 食品機能性成分のニュートリゲノミクス(栄養ゲノム学)に関心がある。 研究室では「学生中心主義」と「世界に通用する人材育成」をモットーに研究指導しており、研究室全員が楽しく学べるよう努めています。卒業後は、食品・化粧品・製薬系の企業などに就職し、専門知識を活かして活躍しています。 昨今、高齢者における認知機能の低下や認知症の発症が大きな問題となっています。また、医療費の増大や介護力の低下が深刻な問題になりつつあります。このような背景のもと、脳機能維持に貢献する機能性食品の開拓ニーズが高まっています。食品化学研究室では、老化促進モデルマウスを用いて食品成分の脳機能保護効果に関する研究を進めており、アンチエイジング(老化予防)が期待される機能性食素材の開発に向けて、企業との共同研究を行っています。研究成果は、健康栄養や医療などさまざまな分野への貢献が期待されます。 機能性食品が超高齢化社会を救う はつらつ長寿の実現に向けて 修士課程久志本尚子さん 国際会議での受賞 (USA) 右は世界的に著名な研究者Dr.シャヒディ氏 食品化学を専門とする研究室であり、女子学生も多く在籍している。研究成果は国際会議で発表し、高い評価を得た研究発表に対しては優秀発表賞などを受賞している 修士課程近藤葉月さん 国際会議での授賞 (Canada) 食品化学研究室では、生体調節機能をもった機能性食素材の開発および分子設計に関する研究を行っています。具体的には、認知症予防効果、アンチエイジング(老化予防)、花粉症や食物アレルギー改善効果、肥満・糖尿病など生活習慣病の予防効果をもつ食素材の開発に取り組んでいます。超高齢化社会を迎えた我が国では、高齢者がいつまでも“はつらつ”と輝き活躍する社会づくりが求められており、食品化学研究室では、健康長寿社会の実現に寄与する新たな機能性食品の創出をめざして研究を行っています。 大豆ペプチドを摂取したマウスでは、脳海馬において神経栄養因子の産生が促進されている。モリス水迷路試験では、記憶学習能の改善効果が示されており、大豆ペプチドの脳機能保護効果が明らかになっている 食品化学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース 4 食品化学研究室 肥満や生活習慣病は本人だけでなく、子や孫にまで引き継がれることが明らかとなっていることから、次世代の健康を考える上で、青年、中高年で増加する肥満や脂質代謝異常を改善することは 非常に重要な研究分野です。肥満や生活習慣病をはじめとする疾患では、内部環境因子(ホルモンなど)だけでなく外部環境因子(食品成分など)による影響が大きいことから、食品成分による疾病の予防、改善が広く研究されていますが、その分子機構には不明な点が多く残っています。食品化学研究室では、上記の疾病に対する食品成分の機能と、その機能を発揮する際のトリガー(標的分子)を同定することを研究しています。 高齢社会である我が国では、医療費の増大が深刻な問題であり、疾病の予防・改善による健康寿命の亢進が課題となっています。肥満は、様々な生活習慣病(動脈硬化症、糖尿病など)のリスクファクターとして知られており、運動不足や食生活の偏りによって引き起こされることから、食品成分を利用した改善策が注目されています。私たちは培養細胞や動物を用いて、脂肪の蓄積を抑制する食品成分を探索し、その作用機構を分子レベルで解明することで、将来的には肥満を予防・治療する創薬の開発へと展開することを目剤しています。 次世代の健康維持に向けた食品成分の探索と作用機構の解明を目指す B 研究から広がる未来 卒業後の未来像 ブドウの果皮由来のレスベラトロール(Res)(左図)は機能性食品成分として知られており、その細胞内結合タンパク質を右図の様に分子生物学的に探索する。矢印部分のバンドが結合タンパク質を示す。 細胞抽出物 Res-bound resin Res Input Pull down − + + + + + + 脂肪細胞へと分化 マウス線維芽細胞株を脂肪細胞へと分化誘導すると細胞内に脂肪滴(橙色に染色)を蓄積する。このモデルを使用して、細胞内の脂肪滴の蓄積を抑制する食品成分を探索する。 食品機能学研究室 生命機能科学コース 培養細胞や小動物を使った実験を通して、食品の機能性や遺伝子導入技術などが身に付きます。また、研究を通して論理的思考力や想像力、技術力といったものも養えるようにサポートします。将来は各分野で研究・開発職などで活躍できる人材を育てています。 三谷 塁一 助教 大阪府立大学で博士号を取得後、神戸大学で日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年10月より信州大学農学部。 専門は食品機能学、栄養生化学。食品成分による脂質代謝調節とNAD+の代謝制御に関心がある。

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