研究紹介2019-2020
7/48

千 菊夫 教授 1987年6月、信州大学農学部助手に着任。助教授を経て2005年4月より現職。生化学・分子生物学、遺伝子工学、微生物学の手法で、農業バイオテクノロジーに用いられる微生物の生命現象解明と利用に関する研究を行なっている。 微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisの顕微鏡写真 同菌は殺虫性タンパク質を大量生産し細胞内にクリスタルを形成する スエヒロタケ(左)とウシグソヒトヨタケ(右)の子実体 これらの担子菌キノコは、シャーレや試験管の寒天培地上でも子実体形成するため、モデル担子菌として用いられている 有用微生物資源を活用して豊かで持続可能な 社会を創る ー遺伝子、細胞、物質生産ー 専攻研究を通して生化学・分子生物学系の実験手法、微生物の取扱い法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進めることで、課題克服能力を養います。卒業後は食品会社、化成品会社、製薬会社等で活躍できる人材になります。 微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisに関する研究を進めることは、環境負荷が大きい化学合成農薬の使用量を低減し持続可能な社会を構築することに役立ちます。また、世界人口の増加に伴う食料不足の問題を解決することも可能となります。一方、担子菌キノコの子実体形成に関する研究を進めることは、キノコの大量・迅速栽培の道を拓くばかりでなく、機能性食品や医薬品の素材としてキノコを利用する産業を活性化させます。 原核および真核微生物資源を対象として、下記のテーマで分子生物学・遺伝子工学的研究を行っています。 (A)微生物殺虫剤の開発 グラム陽性菌Bacillus thuringiensis (Bt)は、農業・衛生害虫に対して毒性を有する結晶性菌体内顆粒(クリスタル)を生産することから微生物殺虫剤として用いられています。Btの殺虫性タンパク質および同遺伝子の安全かつ有効な利用を目指して研究を進めています。 (B)担子菌の子実体形成機構の解明 担子菌キノコは、食品・医薬品産業上重要である一方で、カビ状の菌糸から子実体へと劇的な変化をするため形態形成の見地からも興味深い生物です。遺伝的解析、子実体形成実験の容易なモデル担子菌(スエヒロタケとウシグソヒトヨタケ)を用いて研究を行っています。 分子生物学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース 保坂 毅 准教授 独立行政法人食品総合研究所特別研究員を経て2007年11月より信州大学農学部。 研究分野は応用微生物学。有用生理活性物質の生産に関わる微生物の潜在能力を引き出し、それを創薬研究に活かすことを目指しています。 微生物の潜在能力を活性化して 有用二次代謝産物を発掘する 多様な微生物の機能(ゲノム機能や化学機能等)への理解を深めながら、有用性の高い化合物を微生物の二次代謝産物から探索し、その構造的特徴や作用機構を解析することは、創薬研究の拡大と発展に大きく貢献すると考えられています。保坂研究室では、微生物由来の二次代謝産物から医薬品を開発するための画期的な技術革新を実現させ、限りある生物資源の高付加価値化と有効利用の促進を目指しています。 微生物の二次代謝産物は、人智を越える多彩な化学構造と生理活性を有する化合物の宝庫であり、新薬開発の重要な鍵を握っています。実際に、ストレプトマイシン(抗結核薬)やFK-506(免疫抑制剤)、スタチン(コレステロール低下剤)などの世界を代表するような医薬品の骨格は、放線菌や糸状菌(カビ)といった微生物の二次代謝産物から発見されています。私たちの研究室では、放線菌や糸状菌(カビ)の潜在的な二次代謝能の重要性に着目し、その活性化と利用に向けた技術開発に取り組んでいます。 放線菌や糸状菌は、抗生物質をはじめとする多種多様な生理活性物質を生産することで知られており、産業上極めて有用な微生物群である 放線菌 糸状菌(カビ) 微生物実験や分子生物学実験、さらには生化学実験を通して、微生物の機能を細胞および分子レベルで理解できるようになり、食品・医薬品分野における微生物資源の利用促進に向けた最新の知見や技術が身につきます。卒業後に食品・製薬関連分野の企業等で活躍できる人材の育成を目指しています。 放線菌や糸状菌の潜在的な二次代謝能を最大限に引き出し活用することは、創薬研究を発展させる上での重要な課題とされている 野生型放線菌 改造型放線菌 青色抗生物質を生産する能力が眠ったままの状態 潜在能力が目覚めて青色抗生物質を生産できるようになった状態 応用分子微生物学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース 3

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る