研究紹介2019-2020
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34 リスクマネジメント研究室 上村 佳奈 助教 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了後、森林総合研究所、フランス国立農学研究所(INRA)ポストドクを経て現職。日本およびフランスを中心に森林風害の要因解明と被害軽減についての研究を行う。 台風や豪雨などの突発的な気象現象や近年の人工林の高齢化、手入れ不足などにより、森林では大規模な破壊(撹乱)が発生しています。例えば大型台風や温帯低気圧によって膨大な数の木が倒伏したり折れたりしています。その後の病虫害発生や土砂崩れなどの他の被害にもつながっていきます。このような大規模破壊は、日本だけでなく欧州や北米等、海外でも発生しており、大きな問題となっています。しかし森林被害発生のメカニズムは、風の状況、木の性質、土壌状態、生態系等の多くの要素が複雑に絡み合っているため、未だに解明できていません。そのため国内外の多様な分野の研究者とともに、森林破壊発生の解明に取り組んでいます。 森林の風害発生要因の解明と推定を行う本研究は、森林学、気象学、流体力学、生態力学、工学などを組み合わせた分野横断型研究です。そのため各分野の研究者と協力し合いながら、実施しています。さらにこれらの研究を森林管理という実質的な活動へつなげていくという目標を持っています。まだ発展途上の研究ではありますが、国内外の多様な分野の研究者が一つの問題に取り組むことは、研究だけでなく、柔軟な思考を持つことができ、森林風害だけでなく森林の複雑な生態や構造の理解にもつながっていきます。 自身の研究分野の追及だけでなく、多様な視野をもつことや、議論を活発に行うことで、日本だけでなく海外で活躍できる研究者やマネージャー等の人材が育ってほしいと期待しています。 突発的な気象現象が森林や木に与える影響を探る A B C D (左)2004年台風23号の風害(富山県) (右)スペイン・バスク地方での風雪害 風による森林内の木の振動や地中状態の観測模式図 研究から広がる未来 卒業後の未来像 森 林 ・ 環 境 共生学コース 植木 達人 教授 北海道大学助手を経て信州大学へ。豊かな海と山に抱かれて育ち、人間の生きる原点を学ぶ。専門は森林施業・経営学であるが、林業が川中・川下の需要、地域社会との繋がりを抜きに語れないことから、研究視野を広げ、現場重視の学ぶスタイルを貫いている。 (写真一枚or複数枚組み合わせ) 3つの森林施業法の流れと林分構造 森林セクターを中心とした地域内産業連携のイメージ図 合自然的な森林施業が豊かな森を育み タフでマイルドな地域社会を創造する 森林は住民の命と暮らしを守り、同時に地域経済を根底から支えています。このことは森林の造成による公益的機能の向上と木質資源の利用は表裏一体であることを示しています。植木研究室では森林の造成と利用を統一する技術(森林施業法)について、森林社会学、地域経済学、歴史学を駆使し、その発展過程を解明しつつ、未来指向型の漸伐施業法、択伐施業法の確立および環境保全型森林経営の創造を目指してます。さらにこうした森林経営が地元林産業や地域産業と結合し、新産業の構築につながることを目指しています。 インターナショナルな環境問題を意識しつつも、山造りや森林経営のリーダーとして、豊かな地域社会(農山村)の発展に貢献できる人材を育てている。森林・林業に係わる国家公務員や地方公務員(都道府県、市町村)、林業・林産企業、森林組合など多方面の分野で活躍している。 環境保全型森林経営の確立と実践が、森林そのものを高いレベルの生物多様性へと導き、今以上に森林機能の幅を広げることつながるでしょう。同時に私たちが有効利用できる森林由来の資源の幅を広げ、新たな産業の創造に貢献するでしょう。良質な水の生産や木質エネルギーによる農林漁業振興、森林景観の保全と生物多様性による安全な農林業産物の獲得と商品開発、エコを売りにした観光産業の創造、子供たちの教育の場としての活用等々、豊かな地域社会が見えてきます。 研究から広がる未来 卒業後の未来像 森林施業・経営学研究室 森 林 ・ 環 境 共生学コース

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