研究紹介2019-2020
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33 木材利用学研究室 森林とバイオ研究(ラボワーク)、全く無縁な両者のように思いがちですが、森林を構成する樹木の目に見える個体レベルでの活動は、細胞・遺伝子レベルでの活動と密接にリンクしています。当研究室では、樹幹中に木材を形成するという樹木特有の仕組みの解明や、植物にとって最も重要なイオンであるカリウムイオンを細胞内外に輸送する膜タンパク質(膜輸送体)をコードする遺伝子の解析を主なテーマとして、樹木の生命活動の仕組みや生命活動により生み出される木材の性質について細胞・遺伝子レベルで研究を行っています。 樹木を対象とした細胞・遺伝子レベルでの研究は、シロイヌナズナ、イネをはじめとする草本植物に比べて大きく立ち遅れています。特に、針葉樹に関してはほとんど研究が進んでいないのが現状です。当研究室では、樹木の木材形成や環境応答の仕組みについて細胞・遺伝子レベルで解明し、得られた知見を樹木個体レベルでの仕組みに結びつけることを目指しています。将来的には、分子育種による成長、環境ストレス耐性などの形質に優れた樹木の開発や、開発された樹木を用いた砂漠や塩害地の緑化などにつながるものと期待されます。 建材・住宅関連企業をはじめ、様々な分野の企業に卒業生を輩出しています。研究室で得た知識、技術、そして経験を活かし、民間、公務員を問わず幅広い分野で活躍することが期待されます。また、本学または他大学の大学院に進学し、研究職を目指す選択肢も考えられます。 細尾 佳宏 准教授 新潟大学自然科学系助手、信州大学ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。主な研究分野は、樹木を対象とした細胞生物学や分子生物学。 森林でバイオ研究 ー樹木の生命活動をミクロなレベルで科学するー 針葉樹では世界で初めてK+膜輸送体をコードする遺伝子(CjKUP1)を単離し、その機能や発現特性を明らかにした 野外で生育する樹木または人工気象器内で栽培した苗木から試料を採取して実験室に持ち帰り、様々な解析を行う スギ NH2 COOH 細胞膜 細胞外 細胞内 スギのカリウムイオン(K+)膜輸送体:CjKUP1の 膜貫通構造 CjKUP1は細胞内へK+を取り込む機能を持つ 樹木の遺伝子解析実験 研究から広がる未来 卒業後の未来像 森 林 ・ 環 境 共生学コース 森林計測・計画学研究室 加藤研究室では、日本、世界の森林管理に貢献できるように海外の研究者らと最先端の森林レーザ計測技術の共同開発を行っています。 精密な3D情報を自動的に取得できるレーザ計測は森林・林業分野に極めて有効な技術であり、多様な分野で利用できます。 ドローン、航空機、人工衛星などの空からの計測技術で、広域の森林内にある樹木の立木位置、精密な樹冠情報を1本ごとに自動抽出し、市町村界で集計して、森林の樹種別本数、材積とバイオマスを提供します。 日本の林業に夢を与えるイノベ―ションを目指して、森林・林業の現場である森林管理署、県、市町村、森林組合と航空測量会社のみなさんと産官学の技術連携による技術開発を進めています。 研究成果を現場へフィードバックすることで感謝され、技術が浸透します。 空から森林の様子を広範囲で科学的な目でセンシングすることで、森林の資源情報を短時間に精密につかむことができます。この基本情報をもとに間伐や収穫木の計画と予想、植栽木の成長と変化を分析し、森をどうしたらよいか、計画します。 独自の技術を持つことで、森を見る視野が広がり、就職にも強い武器となります。卒業後は林野庁と都道府県の森林管理者、航空測量企業やコンサルタント技術者として活躍しています。 加藤 正人 教授 北海道立林業試験場資源解析科長を経て、2002年より信州大学農学部。 ドローン、航空機、人工衛星などのリモートセンシング(遠隔探査)技術を森林管理に応用する研究開発を進めています。 世界に向けてオリジナルの森林計測技術で 森林を広範囲かつ精密に半自動で解析する 森の基本情報:何処にどんな木がどれだけあるか? 1本ごとに樹種の本数、資源、混み具合がわかります ( 森林官の夢の実現 : ドローンレーザーによる精密計測 笹の濃い山岳地や危険個所において、森林調査をせずに、鳥のように森林を上空から見て、精密な樹冠、立木位置、樹高、材積を自動抽出することで、安全かつ短時間に資源内容を正確に把握します 研究から広がる未来 卒業後の未来像 樹冠自動抽出とラベリング 樹冠カラーリング ドローンレーザー 森 林 ・ 環 境 共生学コース

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