研究紹介2019-2020
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29 治山学研究室 治山学研究室では、森林の水源涵養機能(緑のダム機能)や、表面侵食・崩壊などの山地災害に関する研究を行っています。森林の水源涵養機能については、大学演習林等に試験地を設け、気象・土壌水分・河川流量などの観測を行い、長期的にデータを取得しています。とくに、「森林の水源涵養機能の本質」とされている森林土壌の働き(保水性、浸透・透水性)について、より詳しい研究を行っています。土壌保全を通して、森林の水源涵養機能を高めるための森林管理方法の開発を目指しています。 水は私たち人間の生命維持に不可欠なものであり、毎日の生活にも欠かすことができない重要なものです。我が国の場合、水道の水のほとんどは、水源地帯である森林の土壌の中を一旦通過してきたものです。普段意識していないかもしれませんが、私たちの生活は森林と強く結びついているのです。水源涵養機能に大きく影響する森林土壌の働きを明らかにし、土壌保全につながる森林管理方法を開発することは、私たちの生命・生活を守ることを意味します。森林と人間が共生することは、私たちの生命・生活、そして森林を守ることにつながるのです。 小野 裕 助教 信州大学大学院、名古屋大学大学院を経て1990年より信州大学農学部。 森林の水源涵養機能に大きく影響する森林土壌の働きについて研究を行っている。現在、荒廃した土壌の回復過程について研究中。 試験流域に流量観測施設を設けて、流量を長期的に観測している(信州大学手良沢山演習林) 単粒構造の土壌に比べ団粒構造の森林土壌では孔隙(隙間)が多く水が浸み込みやすい 森林の緑のダム機能を明らかにし 森林と水資源の保全を目指すー治山学ー 森林の持つ機能を、理論と体験の両面からとらえることによって、自然の重要性や、自然現象を貫く原理や法則を理解し、突発的に起こる事象への適応力が身につくでしょう。 卒業後は国家や都道府県等の公務員、環境調査会社等で主体的に活躍できる人材となるでしょう。 研究から広がる未来 卒業後の未来像 森 林 ・ 環 境 共生学コース 緑地生態学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 大窪 久美子 教授 千葉県立中央博物館学芸研究員を経て1997年4月より信州大学農学部に着任。 造園学における緑地や景観の保全、計画に関する研究を行っている。具体的には希少植物の保全や外来植物への対応等の基礎的、応用的研究をすすめている。 (写真一枚or複数枚組み合わせ) 研究対象地の一つである霧ケ峰高原:貴重な半自然草原群落 緑地生態学とは、都市緑地のみならず、農村緑地、自然緑地をも対象とし、生態学的視点から地域管理計画を検討、策定していく学問領域です。 緑地生態学研究室は1997年にできた比較的新しい研究室です。すばらしいフィールドが身近にある立地を生かし、実際には二次的自然や原生自然を対象とした保全的研究が多く行われています。外来生物の侵入と定着は、生物多様性の低下や在来生態系へ負の影響をもたらしており、国際的な問題となっています。本研究室では貴重な自然環境に定着している外来植物の現状を把握し、在来植物や在来生態系への影響を評価する研究を行っています。 例えば、特定外来植物に指定されているキク科のオオキンケイギクは河原や堤防草地に定着しており、在来植物へ負の影響を与えていることが示唆されました。また、外来種のフサフジウツギは在来同属種と送粉関係で競合関係にあることがわかってきています。霧ヶ峰高原では県の外来植物駆除事業に参画し、具体的な取り組みに協働しています。 緑地や景観の保全、管理を 自然と人との関係性から探求する 絶滅が心配される水生植物群落の自生地への巡検 卒業生や修了生は環境、造園や林業関係の専門職として地方公共団体や国の公務員になっている方が多いです。また、民間企業では環境コンサルや食品関係等、幅広い進路をとられています。 森 林 ・ 環 境 共生学コース

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