研究紹介2019-2020
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入枝 泰樹 助教 博士研究員を経て2016年10月より信州大学農学部。 糸状菌(カビ)と植物の感染・防御機構を解明する研究に取り組んでいる。両者の生物間相互作用に着目した病害防除法の開発に繋げたい。 植物病害を引き起こす原因の70~80%は糸状菌(カビ)です。糸状菌病を防除するためには、病原糸状菌と植物の相互作用を深く理解する必要があります。本研究室では、多種多様な農作物に甚大な被害をもたらす炭疽病菌(Colletotrichum属菌)と、その宿主・非宿主植物を対象に、両者の共進化の結果である感染・防御戦略を研究しています。病原糸状菌はどうやって植物への感染を成立させるのか。そして、植物はどのように糸状菌の攻撃を防ぐのか。これらの課題を分子レベルで解明することを目指しています。 炭疽病菌は非常に種類が多く、様々な植物に感染被害をもたらしている植物病原糸状菌(カビ)です。その感染メカニズムを完全に掌握し、植物が本来備える免疫系を十分に理解すれば、植物保護に大きく貢献できます。また、カビと植物の相互作用システムは学問としても魅力的な素材です。植物保護の観点に立ちながら学問を追求することで、新しい「糸状菌病防除技術の開発」と「自然界の真理の探究」を同時に行うことができると考えています。 大学、研究所、企業等の研究従事者に必要な生命科学の基礎および専門の知識・技術が習得できます。また、論理性・問題抽出力および解決力・表現力等、社会で役立つ能力が磨かれますので、カビや植物に関連しない様々な分野でも活躍できる人材になります。 先生のお写真 炭疽病菌等の植物病原糸状菌(カビ)はそれぞれの宿主植物の免疫系を抑制して感染する ウリ類炭疽病菌が感染したキュウリの葉(左) 緑色蛍光タンパク質で可視化したカビの活物寄生型侵入菌糸(右) 10mm 宿主細胞を殺し、栄養を摂取する 植物資源科学コース 研究から広がる未来 卒業後の未来像 微生物植物 相互作用学研究室 カビと植物が織りなす共進化 両者の巧みな感染・防御戦略に迫る 小林 みずき 助教 明治大学大学院農学研究科修了後、明治大学農学部助教を経て、2019年4月より現職。博士(農学)。専門分野は農業経済学、農村社会学。 調査先では見て、聴いて、時には触れたり、嗅いだり、食したり… フィールドワークを通じ、現場の実態を自分の五感で確かめる。 農村振興に欠かせない農産物直売所や農産加工、農家民宿等も農業経営の一部。多くの女性たちが活躍している。 農業経営学の対象は主に農業を行う経営体です。超高齢化社会を迎えた我が国の農山村では農業の課題は山積みです。しかしその一方で、多様な農業者や経営体が出現し、今までにない魅力的な農業を展開しています。 本研究室では地域振興を目標としながら、農業経営体の育成を考えます。農業経営体のみならず、それらを取り巻く地域社会や食品・流通産業、消費者等、あらゆるものを研究の対象に取り込み、農業と農村の振興策を検討していきます。 本研究室での主な研究方法はフィールドワークによる社会調査です。現場に身を置くことで、問題の所在と解決方法を考えます。調査先ではコミュニケーション能力も必須。現場での活動を通じ、実践力を養い、適応能力を高めることで、社会で活躍できる人材を目指します。 農業・農村の実態から、地域振興を目指したこれからの農業経営を考える 農業経営学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 今日の農政では農業経営体の規模拡大を支援・推進する傾向が強まっています。しかし、中山間地域をはじめ、農業経営の規模拡大が困難な地域も多く存在します。例えば長野県の農家数は全国1位(2019年時点)。多数の小規模な農家によって、農業という一つの産業が支えられています。こうした現実を前に、多くの農山村では自治体や集落を単位とした地域全体で農業の問題を解決してきました。その一つが「集落営農」という形態です。 農業経営学研究室では、こうした農村の現状を踏まえつつ、農業経済学や農村社会学の考え方を援用しながら、時代に見合った農業経営のかたちを模索し、農業経営体の育成について考えます。現場での調査、多くの方々との議論を通じ、農業・農村をはじめ社会の問題をより深く掘り下げ、実証的な分析を行います。 現地の方々の勉強会等にも参加し、問題や情報を共有する。 26

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