研究紹介2019-2020
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雑草学研究室 渡邉 修 准教授 草地試験場・岐阜大・農研機構研究員を経て2005年4月より信州大学農学部。 外来植物、雑草の分布・生態調査をベースにした植生管理技術に関わる研究を行っている。山岳域の植生管理に関する研究にも従事している。 雑草学研究室では、外来植物の発生と空間分布に関わる研究に取り組んでいます。グローバル化が進み海外との人的・物質的移動が頻繁になると生物の移動も国家を超えて生じます。外来植物はすでに多くの種類が国内に定着し、雑草化して農業や生態系に被害を及ぼしています。また、国立公園など自然度の高い環境でも雑草侵入が問題となっています。雑草学研究室では雑草の分布状態を簡易に把握する方法を確立し、発生のモニタリングと蔓延防止技術につながる研究に取り組んでいます。 身の回りにどのような植物があるのか、我々はほとんど意識しないまま普段過ごしています。外国から来た植物は、日本人に馴染みがないため、多くの場合、嫌われ者となっていますが、その生態や分布はあまり理解されていません。一度侵入した外来生物は、多くのコストや人手をかけても根絶することはできません。根絶できないのであれば、共存するしかありませんが、農業生産や生態系に被害が出ないうちに、早期に発見して対策することが必要です。雑草学研究室では、外来植物のモニタリング調査を通じて問題となる植物を早期に発見する研究を、ドローンなど機器と最新の画像処理技術を使いながら行い、汎用性のある観測技術を作りたいと考えています。 (圃場観測用ドローンを利用した雑草観測と自律飛行プログラム) (高解像度空撮画像処理による雑草発生地点の可視化) フィールドにおける雑草調査を通じて、農業生産の現場で問題になってる生産阻害要因について整理し、生産効率を下げずに持続的な農業を行う技術を身につけます。国や県、自治体と連携し、雑草問題解決に向けた取組を行うことができる人材を育成します。 農業生産や生態系に影響を与える 外来植物のモニタリング 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 園芸生産共生学 研究室 持続可能な園芸作物生産を目指し、 動植物の生態の理解とその応用を行う 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 緑の革命に代表される多投入型農業の技術は、作物生産量を飛躍的に増加させました。一方、生産に用いる資源は無尽蔵に使用できず、過剰投入による問題も生じています。このため、持続可能な手法による作物生産のあり方も検討されるべきで、そのために、生物の生態の理解が必須です。 生物多様性の保全と持続可能な利用のために世界が取り組むべき事項が「愛知目標」として2010年に採択されました。それ以降、事業活動における生物多様性保全の重要性がますます高まっています。生物多様性の維持による生態系サービスを園芸作物の生産に利用できないか、特に植食性昆虫や雑草との関わりに着目して、研究していきます。 アブラナ科植物がもつ化学物質「グルコシノレート」は、種間関係を読み解く手がかりの一つ。人間への機能性成分としても注目される。 土壌中に生息するさまざまな生物と植物の関係には未解明課題が多い。例えば、近縁種でも害虫になる昆虫とそうでないものがいる理由はわかっていない。 研究計画立案や卒業論文執筆などを通じて、既存概念にとらわれない物事の考え方や、発表技術などを学んでもらいます。それらの技術を習得するのは時間がかかりますが、習得すれば専門や社会の変化に翻弄されても生き抜けるでしょう。 植物は獲得した資源を成長や防御に使い分けます。さまざまな環境における植物の資源獲得や分配の仕組みを理解することは、持続可能な作物生産手法を探る手がかりとなるでしょう。また、慣行農法では害虫はただの悪者として排除されてきました。しかし、緩やかな食害は収量を減少させても、作物の機能性成分を増加させるかもしれません。昨日の敵は今日の友、多様な生物と共生し、多様な品質の作物を創れる基礎的知見を集積していきます。 角田 智詞 助教 2009年首都大卒、2014年首都大・院修了(博士(理学))。横浜国立大学 産学連携研究員、ドイツ生物多様性研究センター 博士研究員などを経て、2018年3月より現職。 複雑な種間相互作用をとらえるため、多様な実験手法を用いた生態学を行う。 Tsunoda & van Dam (2017) Pedobiologia Plant Physiol (2006) Figure 13.21 HPLCで 分析 植食性 昆虫 昆虫寄生性線虫 分解者 植食性線虫 菌根菌 根粒菌 成長促進バクテリア 病原菌 病原性 バクテリア 24

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