研究紹介2019-2020
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伴野研究室で開発した赤果肉リンゴ品種‘ハニールージュ’(左)と赤果皮、赤果肉の遺伝子の解析による早期選抜技術の開発(右) 自分たちで自ら交配し、種を播き、長年かかって育て、研究を進めることで新しい発見や「新しいくだもの」を創造することに繋がる DNAマーカーを用いて 『新しいくだもの』を効率的に創る! 伴野 潔 教授 京都大学農学部助手、鳥取 大学農学部助手、助教授、 信州大学農学部助教授を 経て、2003年より現職。 専門分野は果樹園芸学。 ナシやリンゴなどの落葉 果樹の栽培、ホルモン生理、育種などに関心がある。 伴野研究室では、ナシやリンゴの新品種を効率的に育成するためにDNAマーカーを利用した育種法の開発や研究を行っています。具体的には、リンゴでは横枝が出にくく作業の省力化に繋がるカラムナー形質や赤果肉形質を導入した新品種の育成、ナシでは複数の病害に抵抗性を持つ新品種の育成を行っています。その他にも、組織培養によるナシとリンゴの植物体再生技術と大量増殖法の開発、リンゴとナシの属間雑種を利用した効率的選抜育種法の開発、ナシのわい性台木の開発などについても研究を行っています。 これまでの果樹の育種は、何千もの交配した実生の中から、10年以上かけてようやく開花・結実してくる個体を育てながら果実形質の良好な系統を選抜していました。現在では、播種した個体からDNAを抽出し、期待される遺伝子や DNAマーカーを調べることで、果実の形質や日持ち性などもあきらかにすることができるようになりました。また、これまでになかったような『新しいくだもの』を創ることで、新しい産業や健康で持続的な社会を生み出すことに繋がります。 赤果肉リンゴを使用した菓子(右) 研究室では、フィールドワークとラボワークを通して農 学を実践しながら、互いに助け合うことで社会性を身に つけます。卒業後は、公務員、JA等農業団体、食品関連 企業などいずれも関連の深い職種につき、全国各地で活 躍しています。 果樹園芸学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース ) 青果物機能学研究室 果物や野菜は、収穫された後も生き続けています。どのように取り扱うかによって、生命活動が変わり、栄養価や有用成分も変化します。濵渦研究室では、地域の青果物(特にカリンやマルメロなど)を材料に、どのような有用成分を含むか、どのように保存や加工をすればその特徴や有用成分を活かせるかを研究しています。また、野菜は自家菜園で栽培・収穫・利用することが最高の品質を味わえる究極の贅沢です。安全・安心と環境共生を実現できる自然農法を取り入れた自給菜園でいかに品質のよい生産物ができるか、についても研究が始まっています。 果物・野菜は人にとって最も身近な生き物かつ食品であるといえます。彼らの生物的特徴や食品機能の特徴をよく知ることは、これからの私たちの健康的食生活を考える上で極めて重要です。現代社会は、人の健康に有益な食品開発と同時に、生物多様性保全などの環境共生が重要な課題となっています。サプリメントとは異なり、食卓を彩る機能もある果物・野菜を彼らの能力を活かした形で栽培・利用する研究は、人と環境にやさしい持続的社会の構築に寄与できるでしょう。 卒業生は、果物・野菜を扱う流通業や、ジャム・ジュースなどを扱う青果物加工業をはじめ、その他の食品製造業に多数就職しています。また研究者派遣の業界に入り、企業の研究チームに参画して活躍している人もいます。 濵渦 康範 准教授 大阪府立大学大学院農学研究科博士後期課程修了、1996年より信州大学農学部勤務。 専門は園芸食品利用学。青果品質保全学、食料機能解析学などを担当。抗酸化成分の変動を主に研究。 自然菜園方式による自給野菜生産と品質の調査を実施(左) 薬用果実(カリンなど)の有用成分を活かした加工も研究(右) 各品目に特徴的な機能性成分の調査とともに、おいしさなどの 品質にかかわる成分の貯蔵・加工に伴う変化を追究している 果物・野菜を知り、活かす。 品質と有効利用の科学 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 23

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