研究紹介2019-2020
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主にイネ、ダイズ、ソバについて、収量と品質の向上のための栽培技術の改良や開発を行っています。品種改良がAKB48の新メンバーとすれば、栽培技術の研究は秋元康、つまりプロデューサーに相当し、タレント(品種)がもつ魅力(能力)を理解し、引き出して人気(収量・品質)を高める、どんなキャラのタレントが売れるのか(どんな特性を持った品種が必要なのか)提案するといった役割を果たします。現在、倒れやすく栽培しにくい稲品種の栽培法改良、ダイズ栽培における有機肥料の合理的利用、過湿条件でも発芽良好なダイズ品種の選抜法開発、ソバ植物体温測定による土壌水分管理の最適化などのテーマで研究しています。 世界の人口増加に見合う食料増産が必要ですが、持続的生産のためには石油やリン鉱石(リン酸肥料の原料)等の有限資源の使用削減が必須です。また、不良環境での生産向上も必須です。今の時代の人だけでなく、未来の人も食べていけるような農業への変革が求められています。未来のあるべき農業は生態系と生物機能をより巧みに利用した高度な資源循環システムでしょう。このようなシステムに一歩でも近づいていくため、有機肥料、土壌の乾燥や過湿といった栽培条件での土と作物との相互作用に注目して作物生産の向上・安定を目指しています。 生産現場を支援する都道府県農業改良普及センター職員やJA職員として活躍できます。また、国家・地方公務員の行政職や技術職の立場で農産業の発展に貢献することもできます。種苗や農業関連資材・機材の生産販売を行う企業、食品メーカーでも卒業生が多く活躍しています。 萩原 素之 教授 石川県農業短期大学助手、信州大学農学部助手、同助教授を経て、2003年11月から現職。 食料生産の向上・安定のため、低投入条件や不良環境下での作物の生育と収量の改善策を探る。 品種(遺伝子)だけで勝負は決まらない 作物の才能を発揮させるproducer:作物学 実験風景:光合成速度・蒸散速度の測定,作物が吸収した窒素の定量,植物体温測定による水の過不足の評価,発芽時に種子から溶出する物質と発芽の良否の関係の調査,などを行う 電子顕微鏡レベルから生産現場まで 大学内での研究だけでなく,現場に出かけることも (農家水田でのイネの収量調査の合間に「農魂」にふれる) 過湿条件でもよく発芽するダイズ品種を探す 希少なモチ米品種 「白毛もち」の栽培実験 ダイズ種子の 電子顕微鏡観察 サーモカメラによるソバの水ストレス評価 作物学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 鈴木 香奈子 助教 国際農林水産業研究センター、国際熱帯農業研究所を経て2019年4月より信州大学農学部。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の土壌肥沃度改善や作物収量向上に取り組んできたことを糧として、高冷地作物の栽培研究に取り組む。 キャベツの健全な根(左)と根瘤病に著しく感染した根(右). これが減収を招く. 高冷地生物生産管理学研究室では、緑肥作物としてソルガム、ヘアリーベッチといったイネ科とマメ科の異なる作物を用いて、高冷地地域の代表的な園芸作物の一つであるキャベツの根瘤病の防止対策ならびに土壌の肥沃度、化学性、物理性、生物性の改善手法を見出していきたいと思っています。この研究の成果は、薬剤を用いた土壌消毒や外部からの多量な肥料投入を軽減させ、環境への負荷を減少させる栽培手法の構築に大きく寄与すると考えています。また、持続的に安全な食物を消費者へ届けるために取り組むべき重要な課題であると考えています。 高冷地地域における園芸作物は重要な換金作物であり、安全な作物を消費者へ持続的に届けることが重要です。しかし、根瘤病によって深刻な被害が生じています。病原菌を除去するために薬剤を用いた土壌消毒が採用されていますが、この使用頻度を減少させる環境保全型の栽培手法を確立できれば、より安全な食物を食卓へ届けることができるはずです。また、生産者にとってもコスト削減につながる有効な手法になると考えています。 作物の栽培やそれを育む基盤の重要性について学ぶことを通して、農業の労働生産性の向上や食糧の安全保障の問題などについて取り組んでいける人材を育みたいと考えています。また、地元長野をはじめとする日本国内や海外の困窮している国々など、様々な地域における農業発展へ寄与できる人材を育みたいと思っています。 緑肥活用による高冷地野菜の環境保全型栽培手法の構築の可能性を追求する 高冷地生物生産管理学 研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 植物資源科学コース 緑肥と化学肥料の組み合わせ施用下(左)と化学肥料のみの連作下(右)のキャベツの結球状態.上は5月下旬に播種、下は6月中旬に播種したもの. 緑肥を併用した方が結球状態は良好で根瘤病による被害が減少する. 22

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