研究紹介2019-2020
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大神田 淳子 教授 埼玉県川越市出身。京都大学准教授を経て2016年10月より現職。日米の大学と企業を経験して現在に至る。専門は生物有機化学、医薬品化学、ケミカルバイオロジー。夢は自分たちの研究成果が新薬の開発に役立つこと。 人工合成分子の創造による生命反応の制御 分子認識を起点とする医薬・ケミカルバイオロジー B 生命機能科学コース たんぱく質間相互作用はポストゲノム時代の新しい創薬標的として注目されています。たんぱく質の外側の平坦な構造を認識する合成分子で相互作用を制御する研究に挑戦しています。 細胞には2万種以上のたんぱく質が働いている 金属による部品組み立て たんぱく質を鋳型とする阻害剤合成 たんぱく質間相互作用を調節する合成分子のデザインと創薬への応用 先人は「医食同源」と表すことで生命を養い健康を保つこと、食の大切さを看破しました。この考え方は今も生きていると思います。私たちはケミカルバイオロジーのコンセプトと技術を生かし、より合目的的な創薬研究に貢献できないか、このことを先に見据えながら研究を展開します。 サイエンスからの学びの活かし場所には、国境や性差による職業適正は無論のこと職域もありません。信州大学での学びを糧に、広い視野を持つ人材として社会へ飛び立つことになります。また大学院への進学を視野に入れることも選択肢の一つとなります。 ケミカルバイオロジー(化学生物学)とは、化学の力を使って生物の 仕組みを解く学問です。私たちの体は生体分子で構成されていますので、生命の仕組みに関与する反応は分子間の相互作用から始まり、化学の言葉で理解できると考えられます。当研究室では生体反応のキープレーヤーであるたんぱく質に着目し、その相互作用を調節する人工合成分子を見出す研究に取り組んでいます。たんぱく質の立体構造に基づいた分子設計を行い、有機合成から 細胞生物学までの技術を駆使して新しい生理活性分子を創出します。その成果は細胞機能の解明に役立つだけでなく、医薬品開発の新しい方法を世界に示すことに通じます。 錨型の抗がん剤 2017年度に1期生を迎えた新しいグループです。信州大学から世界に向けて研究成果を発信することを通じ、地域を牽引し世界に通用する人材育成を行います。疾病の分子機構が加速度的に明らかにされつつある ポストゲノム時代において、分子情報に基づく薬剤設計 は益々重要になるでしょう。私たちは新しい切り口による分子デザインを通じて、難治性疾患や感染症に対する 創薬の方法論や考え方を提案してゆきたいと考えています。 大学で学ぶことで、今まで以上に、課題設定と解決に向けた自由闊達な考えを述べ合うことを楽しめるようになるでしょう。知恵を絞ってアイデアを出し合い、自らが実験し次なる一手を考えていきます。ケミカルバイオロジー研究室での一連の活動を通じ互いに切磋琢磨することで、専門分野を深耕するだけでなく応用力あふれる専門家となり活躍の場を広げることが出来るでしょう。 ケミカルバイオロジー 研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 喜井 勲 准教授 東京工業大学にて博士取得後、同大学 助教、京都大学 特定助教、理化学研究所 ユニットリーダーを経て、2019年4月より現職。研究分野は創薬科学。学生には「なぜ」と「考える」ことを伝えたい。 医薬品や食品機能性成分としての化合物は、標的となる疾患関連タンパク質などへ結合し、その薬理作用を発揮します。しかし、化合物は標的以外にも結合することがあり、これによって副作用が引き起こされます。そのため、副作用を低減する、つまり標的への選択性を向上させる技術が求められています。私たちの研究室では、ポリペプチドからタンパク質へのフォールディング途中の遷移状態を標的とした研究を進め、創薬・ヘルスケア研究開発の課題解決を目指します。 私たちの研究室では、疾患に関連するリン酸化酵素に対する阻害剤を研究する過程で、このリン酸化酵素のフォールディング途中の遷移状態を標的とする阻害剤は選択性が高く、副作用が少ないことを発見しました (Kii et al. Nature Communications 2016)。この遷移状態を新しい創薬標的として、他の疾患関連タンパク質へと応用するための研究を進めています。 取得研究技術:分子・細胞生物学、構造生物学、薬理学、動物実験、ケミカルバイオロジーなど 卒業後の進路:製薬企業、ヘルスケア業界、食品会社、研究者など 創薬標的タンパク質の科学 -創薬・ヘルスケア研究の新しい概念を生み出す- 創薬標的科学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース ChemistryとBiologyの 異分野融合研究 (Kii et al. Org Biomol Chem 2010) ダブルクリック反応: 歪んだ炭素−炭素 三重結合を有する 化合物による有機 化合物と生体分子 の高速連結反応 完成型 タンパク質 フォールディング 中間体(遷移状態) ポリペプチド フォールディング過程 新しい 創薬標的 これまでの 創薬標的 ケミカルノックダウン: 化合物によりフォールディングの進行を抑制することで 疾患関連タンパク質の完成を阻害し、分解へと導く 9

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