研究紹介2019-2020
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機能性分子解析学 研究室 筒井 歩 助教 北里生命科学研究所特別研究員、理化学研究所特別研究員を経て、2017年より現職。 研究分野はケミカルバイオロジー、生物有機化学、有機合成化学、糖化学。 活性物質の中には構造が不安定で実際に生体内や自然界から取り出すことが難しい化合物が数多くあります。また有機合成の理論からは存在していてもおかしくない化合物が、実際には存在が確認されていない場合もたくさんあります。そのような化合物を有機合成の手法で人工的に作り出し、実際に活性を調べることで生命現象や天然物活性のしくみを明らかにする研究を行っています。研究の手法は有機合成、機器分析、生物学的評価と多岐に渡り、化学的手法と生物学的手法の両方を取り入れて実験を進めています。取り扱う物質は主に、ポリアミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク、糖などの天然物です。これまでに特定の酸化ストレス物質を誘発する化合物の生成や、アルツハイマー病に関係するアミロイド-β-ペプチドの凝集を抑制するしくみを明らかにしてきました。 生体物質を始め、自然界に存在する機能性物質は私たちの身体に有用なものばかりではなく、害になるものもあります。化合物そのものがもつ機能と性質を明らかにし、活性発現のしくみを明らかにすることは、生理現象の解明だけでなく、機能性食品や健康サプリメント、医薬品といった分野にも応用できると考えています。自然界に存在する化合物からヒントをもらい、有機合成の技術を使ってより有用な構造の化合物を作りだすことにもチャレンジしています。 生体物質や機能性天然物の活性の発現やしくみについて有機化学の視点から研究します。有機合成、機器分析、生物評価などの知識や技術を生かし、大学院でのステップアップや化学メーカー、食品会社、製薬会社を始めとする関連企業などでの活躍が期待できます。 有機合成化学から生命科学へ ~生命現象の解明と有用物質の創生~ A B D A B C 研究から広がる未来 卒業後の未来像 反応液を精製して生成物を単離し、構造解析や活性試験を行います。 合成実験に使うマグネティックスターラー(左上)とロータリーエバポレーター(左下)。実験の合間に勉強やプレゼンテーションの資料作りもします(右) 生命機能科学コース 真壁 秀文 教授 日本学術振興会海外特別研究員(米国 Purdue大学)を経て1999年6月より信州大学農学部。 顕著な生物活性を持つ天然有機化合物の合成と活性、生命現象の解明を目的とした研究に関心がある。 プロシアニジンB3とプロデルフィニジンB3の前立腺癌細胞を用いた抗腫瘍活性試験 B環にある1つの水酸基の存在が活性に重要である (写真一枚or複数枚組み合わせ) 有機化合物の構造決定には核磁気共鳴スペクトル(NMR)が不可欠 真壁研究室では、抗腫瘍、動脈硬化抑制活性など生活習慣病の予防や治療に関係する「顕著な生物活性を持つ生理活性物質」の合成や創製に取り組んでいます。有機化合物は人間が加工できる最も小さい精密な構造体です。有機合成化学の手法を用いて標的化合物を自在に合成する究極の物づくりを行っています。生理活性物質はごく微量で生物の行動や機能を制御しており、生命現象の鍵を握る存在です。私たちは生理活性物質の活性発現の仕組みや構造活性相関の解明、高度に機能化した分子プローブを創製することで生命現象を解明し、農薬・医薬への応用を目指しています。 私たちは有機合成化学の立場から、生命現象をたどり、優 れた医薬品や機能性物質を作り出すための基礎研究を行い、 人類の健康に寄与することを目指しています。研究の過程 では新規反応の開発も行っており、有機化学の発展にも貢 献することを心がけています。生命現象には様々な有機化 合物が関わっています。本研究室では顕著な抗腫瘍活性を 持つ天然有機化合物の合成を行ってきました。その化合物 を用いて学内、学外の研究者と活性発現のメカニズムの研 究を展開しており、癌を克服すべく研究に励んでいます。 有機合成化学実験を通して有機化合物の取り扱い、性質、精 製方法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねな がら研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会 社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。 活性無し 活性あり NMRによる構造解析 有機合成化学の力で生命現象を探る 天然物合成化学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース 8

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