研究紹介2019-2020
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鈴木 俊介 助教 東京工業大学、東京医科歯科大学、メルボルン大学を経て、2012年より現職。専門は分子生物学、比較ゲノム学等を用いた哺乳類のゲノム機能の進化に関する研究。 ヒトゲノムに秘められた 人類進化の軌跡を読み解く 鈴木研究室の研究は、人類がサルの仲間からどのように進化してきたかという、誰もが興味を抱く、地球史上非常に重要な問いの答えにつながっています。それと同時に、私たちのゲノムが抱えている、癌などのヒトに多い疾患のリスクを新たに明らかできる可能性を秘めています。進化的な観点から、なぜヒトがある病気になりやすいのかを理解する、こうした研究の積み重ねは、将来的に、病気の原因や分子機構をより深く理解し、対策につなぐために不可欠です。 培養細胞を用いた遺伝子操作実験や遺伝子解析の基本が身につきます。自分自身の頭でアイデアを練り、計画を立てて実行することができる、どこに出ても活躍できる主体的な人材に育ってほしいです。 培養細胞をもちいてさまざまな遺伝子操作実験をおこなう 研究テーマごとに班に分かれてチームワークで研究をすすめる ゲノム進化学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース ヒトゲノムの約半分は、動く遺伝子あるいは可動性遺伝因子とも呼ばれる、レトロトランスポゾンとその残骸が占めています。ゲノムへのレトロトランスポゾンの新規挿入は、その周辺に存在する内在性遺伝子の発現調節を変化させることがあり、遺伝子の発現調節機構の進化を推進する可能性を秘めている一方で、遺伝子発現異常による疾患につながる例が知られています。鈴木研究室では、人類がチンパンジーとの共通祖先から分岐した後にヒトゲノム特異的に挿入したレトロトランスポゾンのもつ内在性遺伝子の発現調節機能の解析を通して、レトロトランスポゾンと人類の進化および疾患との関連性を明らかにすることを目指して研究を行っています。 藤田 智之 教授 日本テルペン化学株式会社研究員、大阪府立大学農学部助手、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科助教授を経て、2006年より現職。研究分野は食品化学、天然物有機化学。 加工した素材中の有用成分の組成や成分量の変化を解析します 食品素材(穀類や果実)に水深1万メートルの水圧に相当する圧力をかけて加工すると新たな機能が賦与されます 植物やキノコなど天然素材の中には各種疾病の発症予防や軽減化に寄与する未知の成分が含まれています。それらの素材の中から、酵素の働きを制御することのできる新しい有用成分を探し出し、人の健康維持に役立つ新食品素材の開発を目指して研究を行っています。また、100メガパスカル(水深1万メートルの水圧に相当)程度の加圧が可能な高圧処理装置を用いて、食品素材の新しい加工方法を探究しています。これまでに玄米や玄麦に加圧処理すると、糠(ヌカ)や麸(フスマ)の抗酸化性成分などの機能性成分が精白米や小麦粉に移行することを見出しています。 天然素材に含まれる有用成分を純粋に取り出して、その化学構造を明らかにする技術は、食品分野だけでなく、生薬の分析や生物間で作用する生理活性物質の探索研究にも活かすことができます。そのため他分野の研究者と共同で研究を進めることが少なくありません。研究室で発見した成分や新たに開発した技術などをシーズ(種子)として、有効性の高いテーマは企業と共同で商品化に向けての検討を進めています。 藤田研究室では、食品中の有用成分に焦点を当てて研究を行っています。卒業生は食品企業だけでなく、香料や化成品などファインケミカルズと呼ばれる製品群を扱う業種の開発職として就職しています。 身体に良い新食品素材の探究 ー天然素材は可能性を秘めた宝物ー 機能性分子解析学研究室 研究から広がる未来 卒業後の未来像 生命機能科学コース 【糠の成分を含む白米】 【玄米】 精米 7

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