now115_web
9/20

珍しい大型製膜装置なども紹介しました。「企業の利益を生み出すと同時に社会に役立ち、イノベーションの創出によって環境と水に世界規模で貢献できることを大きな目標として邁進したい」(遠藤RL)。その後、前田瑞夫氏(理化学研究所主任研究員)から「分離膜の分析・評価方法」と題して、シミュレーションと振動分光の組み合わせの成果の報告、手嶋勝弥教授より「安全な水を創る信大クリスタル」と題して、金属イオン吸着除去の結晶材料を利用した簡易型浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」の紹介、木村睦教授は「表面重合膜の開発」と題し、パリレンという高分子の透水性評価と医療応用の可能性の報告、中屋眞司教授は「タンザニアの水環境と水のフッ素汚染調査」と題して、地学的見解と水源に含有されている高濃度フッ素の現地調査の結果を説明しました。最後にCOI-S研究リーダーの高橋桂子氏(海洋研究開発機構センター長)より「水大循環メカニズムと活用」と題して、シミュレーションによる地球温暖化での水循環と利用法の変化の報告、膜利用におけるメカニズム解明への協力についても報告されました。信州大学COI拠点の水研究を中心とした連携の輪が広がり、オールジャパンの産官学連携によるイノベーションプラットフォームが構築されつつある手応えが感じられる概況報告となりました。08研究概況報告に先立ち、今年4月からプロジェクトリーダー(PL)を務める都築浩一氏(日立製作所)からプロジェクト概要についての説明がありました。水需要の増加と気候変動の影響により、このままでは2050年に世界の50億人が水に不自由になる危機感を示し、本プロジェクトの成果である水処理膜の技術革新が一層、重要になることを示しました。本プロジェクトの成果により、海水淡水化プラントの電気代や建設費等でコスト削減ができ、従来技術と比較して造水コストの3~4割削減が可能となるとの期待を述べました。「来年度からは社会実装のステージに入り、ウォータープラザ北九州で実証試験を開始する。実績の上に知識や新事業を創造していくイノベーションプラットフォームも構築していきたい。そのためのプレ討論会も準備している」(都築PL)。概況報告では、若手を含む6名の研究者から発表がありました。はじめに遠藤守信研究リーダー(RL)より「ナノカーボンを用いたRO膜の新機能と応用」と題して報告がありました。カーボン膜の歴史と変遷についてや、カーボンナノチューブ(CNT)を加えたポリアミド(PA)の複合膜を開発して特許を取得したこと、その高い基本性能(透水・脱塩)と優れた表面耐汚濁(耐ファウリング)性について解説がありました。複合膜調整のエンジニアリング技術と分子レベルの材料科学に計算科学を融合させて、広範な汚れ物質(有機物質や無機スケーリング等)に対して付着しない膜のメカニズムの証明ができたと語りました。さらに新しいセルロースナノファイバーを使った膜による工業利用水、純粋なカーボン膜の食品分野での応用、汚れが付かないモジュール部品(スペーサ)への展開、アンダーワンルーフの企業連携による大学では12:00~13:00 ポスターセッション13:00~13:15 開会挨拶・来賓挨拶13:15~15:15 第一部 研究開発の概況報告プロジェクト説明 都築 浩一研究開発の概況報告「ナノカーボンを用いたRO膜の新機能と応用」 遠藤 守信概況報告PROGRAMイラスト提供:エイブルデザインポスターセッション、概況報告の様子都築 浩一 プロジェクトリーダー株式会社日立製作所遠藤 守信研究リーダー信州大学特別特任教授前田 瑞夫理化学研究所前田バイオ工学研究室主任研究員手嶋 勝弥サブ研究リーダー信州大学教授木村 睦サブ研究リーダー信州大学教授中屋 眞司信州大学教授高橋 桂子COI-S研究リーダー海洋研究開発機構地球情報基盤センター長「分離膜の分析・評価方法」 前田 瑞夫「安全な水を創る信大クリスタル」 手嶋 勝弥「表面重合膜の開発」 木村 睦「タンザニアの水環境と水のフッ素汚染調査」 中屋 眞司「水大循環メカニズムと活用」 高橋 桂子15:15~15:35 休憩・ポスターセッション15:35~16:35 第二部 招待講演「海水淡水化の現況と今後」 岩橋 英夫 氏「水の再利用―広がる役割と課題」 田中 宏明 氏16:40~17:40 第三部 パネルディスカッション「新しい分離膜の水処理・社会実装への期待」 モデレータ:上田 新次郎 パネリスト:岩橋 英夫氏・田中 宏明氏・       大熊 那夫紀氏・鍋谷 浩志氏・辺見 昌弘17:40~17:45 閉会挨拶~革新的な造水・水循環システムの実現と地球規模での展開~

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る