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05中嶋聞多特任教授(以下職名略):パネルディスカッションのコーディネーターを務めます中嶋です。濱田学長より「落としどころを決めてのディスカッションは面白くない」とのご意見を頂きましたので、決まったシナリオは設けず実施いたします(笑)。また必要以上に肩書きを意識しないよう、登壇者の皆さんは、「さん付け」で呼び合うことといたします。 さて、このプログラムは「100年企業」がテーマですが、本日ゲストには、長野県塩尻市のご出身で、日本を代表する老舗企業である(株)三越の元代表取締役社長で、会長、特別顧問も歴任されている中村胤夫さんにお越し頂きました。中村さんのお話(※キックオフイベント前半では中村さんの基調講演を行いました)をお聞きになって、ポイントとなるところがどこだったか、小城さん、まとめて頂けますでしょうか。小城武彦社長(以下敬称略):企業とは何か、経営の目的とは何なのか、しっかり軸を持っている会社が長く生き残る、環境にも適応していけるんだと感じました。リサーチ・フェローの皆さんもその企業の存在意義だったり、経営の目的であったり、その辺りをまずしっかりと確認し、磨き上げていくプロセスが大切なのではないかなと思います。中嶋:濱田さんは信州大学の学長に就任される以前は、繊維学部の教授・学部長を歴任されています。かつて斜陽産業といわれた繊維産業が、今はあらゆるところから注目されていますが、近年の繊維産業の動向から100年企業に対する示唆を頂きたいのですが。濱田学長(以下職名略):繊維というと、我々の年代は特に斜陽産業というイメージが強いのではないかと思います。しかし、近年、産業用材料としての応用やスマートテキスタイルといった高性能繊維の誕生によって「繊維研究」は各分野から大きな注目を集めるようになりました。でも「長く続けていればいつか復活する時がくる」ということが言いたいのではなくて、産業が長く続くためには「変わらぬもの」と「変わっていくもの」をうまく見極めることが大切なのではないかと思うのです。 繊維の基盤技術は、実は昔からあまり変わっていません。しかしその応用範囲は大きく変化しています。それが繊維産業の大きな転換点でした。変わらぬ技術を維持しながら、そこに新しく何を付加していくか、社会の変化の中で何をしていくか、その見極めができたかどうかが、長く続く産業と続かない産業との違いではないかと思います。中嶋:これまでのお話を受けて、プログラムに込めた思いについて、小城さん、言及して頂けますか。小城:実は、このプログラムを作る際の一番のポイントは、「作っている私たち自身が行きたくなるようなプログラムにする」ことだったんです。今私はリサーチ・フェローの皆さんが羨ましい、できれば替わりたい(笑)。 地方は日本の「課題先進地」だと言われています。でも、地方にいれば東京の情報なんていくらでも入ってくるけど、東京にいると地方の情報はほとんど入ってこない。地方にはこんなにいい会社がいっぱいあるのに、なぜ東京の人間は誰も知らないのだ!って、思わず怒りたくなることもあります。情報発信では、地方は開拓の余地がまだまだある。ぜひリサーチ・フェローの皆さんは、信州にこの企業ありと、東京だけでなくグローバルに発信するくらいの勢いで取り組んで頂きたい。 今回、短い期間にリサーチ・フェロー希望者は100名を超える応募があり、大きな反響も頂きました。信州大学での取り組みが成功すれば、これがモデルケースとなって各地に広がっていくと思います。そうした意味でも次代を切り拓くプログラムになるのではないかと大変期待しています。濱田:大学は、根本的に人材を“ミキシング”する場だと思っています。例えば信州大学の場合、約75%が県外出身者ですが、全国から集まり、信州に残る人もいれば、ここから世界に羽ばたく人材もいる。企業が「長く続く」ために必要なこととは?地方は「課題先進地」その未来を拓くプログラム「信州100に想いをパネルディスカ事前打ち合わせ一切なしの信州倶楽部代表世話人・(株)三越 元代表取締役社長中村 胤夫 氏1936年長野県塩尻市生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、三越に入社。2002年に代表取締役社長に就任。相談役や特別顧問を歴任。(株)日本人材機構 代表取締役社長小城 武彦 氏1984年通商産業省(現経済産業省)入省。(株)ツタヤオンライン代表取締役社長、丸善(株)代表取締役社長などを経て、2015年より(株)ミスミグループ本社社外取締役(現職)、(株)日本人材機構代表取締役社長(現職)などを兼任。【コーディネーター】信州大学 特任教授中嶋 聞多 慶応義塾大学大学院文学研究科修了。地域活性化のためのまちづくり構想を得意とする。2003年信州大学人文学部教授、2014年事業構想大学院大学研究科長・副学長などを歴任。2016年より現職。
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