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1998年には、坂口名誉教授と共に最初の大学発ベンチャー(株)SKINOSを立ち上げ、本格的な市販化に着手します。同年、日本発汗学会を設立、日本の発汗研究をリードしてきました。スキノス(SKINOS)という名称は、皮膚(SKIN)に大橋特任教授と坂口名誉教授のイニシャル「O」と「S」を加えて命名されたものだといいます。その後、技術の改良を進め、2007年に長野県坂城町にある(株)西澤電機計器製作所(以下、西澤電機)に製造販売を移管します。実は、長野高専で坂口名誉教授の教え子だったのが百瀬社長。学生時代から発汗計の研究に励んできた百瀬社長は、2006年に長野高専を卒業し、西澤電機へと就職を果たします。当時も今と同様、技術開発から販売まで、さまざまな業務を担っていたそうです。「現在も機械の製造は西澤電機で行っていますし、私自身、やっていること自体は当時からそれほど変わっていません。ただ、今の方がやらなきゃいけないことが山積みです(笑)」(百瀬社長)。2017年、換気カプセル型発汗計の可能性をさらに広げるため、その仕組みも需要も知り尽くしている百瀬社長を代表に、新たに大学発ベンチャー(株)スキノスNAGANOを設立。2017年12月には念願だった保険適用を実現し、2018年4月からは、臨床検査法のひとつとして医療現場での利用が始まりました。そして同年5月、(株)スキノスに社名を変更し、現在に至っています。保険適用後の反響は想像通りに大きく、今年度の売上は初年度の約2倍に届く勢いだといいます。「本格的に事業化させるには保険適用が条件だと考えていました。それが長年製造を担ってくれている西澤電機との約束でもあったし、私の夢でもありました。最初の開発から約30年かけてようやくここまでたどりつきました」(大橋特任教授)。保険適用という長年の目標を叶えた大橋特任教授は、この先の夢を次のように話します。「アスペルガー症候群やいじめなどを背景に、生きづらさを抱える子どもたちが今増えています。しかしそうした子どもたちにも、それぞれに良いところがあり適正がある。私の夢は、そんな子どもたちが、何が得意で何が苦手なのか、それぞれの適正を誰もが分かるようなデータに基づいて伝えること。発汗計がその役目を担ってくれると思っています。百瀬さんの行動力はすごいですよ。全国どこへでも行きますから」。現在、心理学を専門とする信州大学学術研究院(人文科学系)今井章教授との共同研究も進行中です。「大学ならではの人脈が活かせるのも大学発ベンチャーのメリットです。なかなか1人じゃできないことも多い。さまざまな人に助けて貰いながら事業を進めています」(百瀬社長)。「汗を知る」ということは、人の「こころ」と「からだ」両方を知る、つまり「ヒトを知る」ことに他なりません。「もっと発汗計を普及して、『昨日、汗測ったよ』という会話が日常的に聞かれるような世の中にするのが今の目標。海外展開も視野に入れています。それだけのポテンシャルを持つ機械だと思っています」(百瀬社長)。座右の銘を聞くと「『なせばなる』ですかね(笑)。今は先に進むしかない。積極的に投資もしていきたいと思っています。あと、エンジニアでもあるので、『ものづくりの精神』は忘れずにいたいですね」と力強い答えが返ってきました。換気カプセル型発汗計が、世界のスタンダードになる日も近いかもしれません。「汗の計測」で生きづらさを感じる人に救いの手を百瀬社長の“ものづくり”に対する思い 株式会社スキノス 代表取締役百瀬 英哉 氏 (ももせ ひでや)2006年長野工業高等専門学校専攻科生産環境システム工学科卒業。2006年より(株)西澤電機計器製作所に勤務。在職中に、信州大学大学院医学系研究科保健学専攻修士課程修了。2017年(株)スキノス設立。現在に至る。趣味はグラフィックデザイン。持ち運びも簡単な「可搬型1CH発汗計SMN-1000」。手の平に置いているカプセルに空気を送り、湿度変化を測るセンサーで発汗を計測。取材中、広報室スタッフの発汗を計測。カプセルに皮膚を接触させるだけで計測ができる。きわどい質問にスタッフの手にも汗が。モニターには微量な発汗の様子もしっかりと記録されている。据え置き型2CH 発汗計SKN-200008発汗計」で株式会社スキノス

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