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10事者の目線も加わったより実用的な講義になることが伺えました。他にも、自治体の観光協会やバス会社、旅館組合など、宿泊業、観光業に従事している人が受講者として集まっています。なかには、実際に講義の中で扱う地域からの参加もあり、受講者にとって、より実践に結び付けやすい講座となっています。9月18日に行われた第1回目の講義で主な話題となったのは、アウトドア用車いす「HIPPOcampe-ヒッポキャンプ(HIPPO)」とデュアルスキー(着座式スキー)。アウトドア用車いすHIPPOは、利用者の安全性と介助者の負担軽減に配慮された設計で、スタイリッシュでありながら、あらゆる不整地で利用しやすい車いすです。講義の中では、この車いすを使って登山を行った事例の発表もありました。デュアルスキーは、重度な障害のある人にも対応可能なしっかりとした背もたれや、体への負担を軽減するためにサスペンションが装備されています。そして厳しいトレーニングを積み、ライセンスを取得したプロのパイロットが操作を行います。先進事例紹介として登壇した八ヶ岳富士見高原リゾート株式会社の福田敏明さんは、このデュアルスキーについて、「障害のある子どもが生まれてから大好きだったスキーをしなくなったお母さんが、富士見高原で一緒にスキーをできて感動していた」というエピソードを語り、障害のある人とその周りにいる人達の観光に対する需要の大きさを語りました。今後の講義では、アウトドア用車いす「HIPPO」の取り扱い方法など、実技も含め行われる予定です。日本ではこれまでバリアフリー旅行という選択肢しか存在しませんでした。信州大学は、もう一つの選択肢ユニバーサルフィールド(UF)という概念を提唱し、このUFC養成講座を行うにあたって、観光から現在、日本社会にある障害者と健常者の関わり方やその意識に変化をもたらしたいと考えています。いずれ、この講座を通し、真のUTが各地で広まり、一般的になることで、障害者を巡る社会のあり方が変わる可能性があると考えているからです。例えば、障害者の積極的・戦略的雇用機会の創出。障害者とその家族や友人が、あきらめてしまうことの多かった観光コンテンツを提供できるUTは、観光業にとっても新しい市場です。その需要は大きく、市場はまだまだ広がりをみせると考えられています。今後、その市場が大きくなり、障害当事者とその家族らの活動が活発になれば、その経験は観光業のみならず社会形成においても重要な指針となります。もちろんUTの市場の拡大は、障害者の新しい分野での雇用の創出という点でも期待が持てます。またUFにおける車いす利用者への応対など、より専門性の高いボランティアの発掘・確保など、新しい人材の需要が生まれるかもしれません。UFが一般的になることで、インクルーシブ野外教育の有効性についても議論が活発になり、幼少期から日常的に障害者と関わることで共生社会を無意識に受け入れる社会環境が構築されます。このような観光をきっかけにした共生社会の実現が、この講座の最大の目標です。多様な人々に、日本の美しい大自然を享受する権利が保証され、真の共生社会を実現するために、山岳地帯信州からUFの可能性を広げていきたいと思います。光産業の中核人材育成・強化事業」採択 ジュ養成講座」 開講式&第1回講座山岳地帯信州だからできるユニバーサルツーリズム山あそび。」る人材育成※インクルーシブイベント:合理的な配慮のもと健常者、障害者ともに参加できるイベントデュアルスキー(着座式スキー)(左)とアウトドア用車いす「HIPPOcampe」(右)第1回目の講義の様子

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