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広がっていくと思います。信州大学が持つ特許技術を用いれば、ニッチな分野ではありますが、必ずビジネスになる。今後、個人の森林所有者や森林組合などの要望に対し機動力をもって対応することができれば、さらなるビジネスチャンスにつながると感じています」と加藤教授は期待を込めます。現在の社員は、技術顧問の加藤教授を含め3名。竹中社長のほか、香港出身の留学生(総合理工学研究科修士課程2年在学中)でもある張桂安さんが技術主任を務めています。「『大学で学んだことを活かした仕事に就きたい』とずっと考えていました。もともとは公務員志望だったのですが、修士2年の頃、会社設立の動きが出て。研究していた技術自体とても実践的なものだと思っていましたし、ベンチャーの方が大学で学んだことを活かしていけると感じ代表就任を決意しました。大分悩みはしましたけど(笑)」(竹中社長)現在、主な顧客ターゲットとしているのは行政機関。すでに長野県や伊那市など、県内自治体との共同事業が進んでいるほか、岩手県、石川県、山口県など、県外からの問合せもあり、実演を交えた研修会や実証実験などを随時行っています。「ドローンレーザの普及はまだまだ進んでいません。この会社も始まったばかり。研修会を重ねながら、普及を進めている段階です。でも今後爆発的に広がっていく可能性があると考えています。この会社が大学の特許技術の受け皿となってくれていることは、技術普及にとって大きいことだと感じています」(加藤教授)長野県内では各森林組合にドローンを配置する動きも進んでいます。今後、安価な普及型ドローンを使った計測は森林組合などの林業事業者自身が行い、得られたデータの解析を同社が担う、というビジネスモデルも想定しています。さらに標高など、さまざまな地表データが取得できる高性能な産業用ドローンレーザの購入も決定しているそうです。普及型ドローンの場合は、航空レーザなどで得た標高などの測量データと組み合わせて解析を行う必要がありますが、この産業用ドローンであれば、航空レーザによる測量データが整備されていない地域や、小面積の森林でも計測が可能となります。さらなる事業の拡大が期待できるといいます。木材価格の下落、安価な外材の輸入や木材需要の減少、担い手不足や高齢化など、さまざまな課題を抱えてきた日本の林業は、長く産業として停滞を続けてきました。しかし、終戦直後から高度経済成長期に植林された日本の人工林の多くが、今、伐採適期を迎えています。木材資源量が増加している今だからこそ、「林業の成長産業化」が求められているのです。先人たちが未来の私たちに残してくれた森林資源。精密林業計測(株)が担う仕事は、その資源をいかに使い、そして50年後、100年後の未来へ、受け継がれてきた地域資源をいかにバトンタッチするかを考える仕事でもあります。「この技術で森林が正確に維持管理されていけば、50年後もきっといい森になっていると思います。未来を見据えて技術を普及させていくことがこの会社の役割だと思っています」と竹中社長。信州大学発の技術が、林業の未来を拓く確かな足掛かりを築き始めています。停滞する林業の突破口となるようなイノベーションが進行中得た情報で作った1本ごと得た樹高や立木位置などの50年、100年先の豊かな森づくりのためにードに― 2013年信州大学農学部に入学。3年次から加藤正人教授のもとで森林計測の研究に携わる。修士課程2年在学中の2017年5月、精密林業計測(株)の代表取締役に就任。2018年3月信州大学総合理工学研究科農学専攻(修士課程)修了。2018年4月から信州大学総合医理工学研究科総合理工学専攻(博士課程)1年に在学中。精密林業計測株式会社代表取締役社長竹中 悠輝氏ドローンでの計測だけでなく、そこから得た画像やデータを解析し、森林の状況を可視化することが、竹中社長の仕事のひとつ(※1)樹木の上部で葉が茂っている部分ドローン計測を実演している様子。ドローンを操縦するのが技術主任の張桂安さん(中央)。(提供:長野日報社)08する会社!
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