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グといえば、航空機を使った計測がほとんどで、県や市町村での広範囲の計測が主でした。ただ森林の間伐や伐採、植林などの施業単位は20ヘクタール以下の小面積であり、将来的に、小型で小回りのきくドローン計測が林業において必要不可欠な森林調査は、そのほとんどが人力で行われています。立木の位置や本数、樹種の分別、樹高の計測など、笹薮が繁茂した中、目視で行わなければならない森林調査は、多大な調査コストがかかる上、危険も伴うハードな作業。しかし、人力ゆえに、その精度は必ずしも高くはありません。「地上からの森林調査をせずに、空から森林の状況を把握できたら―」。林業従事者や森林官が夢見ていたことが、今、さまざまな技術革新により、現実になりつつあります。「これまであいまいだった森林資源情報も、ドローンレーザや衛星画像、航空写真などを使えば、より正確で効率的に測り、解析することができるようになります。加藤先生が開発した、こうした新しい森林計測・解析技術を使うために生まれたのがこの会社です」と代表取締役の竹中悠輝さん。精密林業計測(株)が主な事業としているのが、ドローンによる森林のレーザ計測とデータ解析。傾斜地を含む5ヘクタールほどの森林を地上から調査する場合、人力では3人で10日ほどかかりますが、レーザ計測器を搭載したドローンであれば、15分程の自動飛行と1週間程度の解析期間で、撮影範囲全域について客観的でより精密に森林情報を得ることができます。特に、同社が強みとしているのが、独自の「データ解析技術」。例えば、高性能な産業用ドローンレーザであったとしても、空からの生データだけでは、密集した樹冠(※1)の輪郭が不明瞭であったり、下層植生が写ったり、どうしてもノイズが生じてしまいます。同社では、得られたデータのノイズを独自のプログラミングで除去し、正確な樹冠を1本1本抽出、さらに計算式などを用いて、樹高や太さ、材積など、単木ごとの森林資源量を算出する、というサービスを提供しています。こうした解析手法こそ、加藤教授が開発した特許技術です。「これまで、林業におけるレーザセンシン森林調査に「ドローン」という救世主!ドローンによる精密計測での精密樹冠図と、計算式で森林資源表ドローンの誕生、レーザセンシング、ICT技術の向上により、林業の現場に大きな変化が生まれつつあります。これまでは人力で膨大な労力と時間を費やした森林の調査や管理に新しい計測技術が普及し始めていることがそのひとつ。ICTなどを活用して得たさまざまな情報を駆使して、効率的に森林管理を行う林業のことを「スマート精密林業」といいます。その日本におけるトップランナーの一翼を担うのが精密林業計測(株)。信州大学農学部の加藤正人教授が開発した新しい計測・データ解析技術を林業の現場に普及させていくため、平成29年5月に誕生した農学部発ベンチャーです。代表を務める竹中悠輝社長と、その恩師で同社技術顧問も務める加藤教授に、現在の事業や今後の目標、日本林業の未来についてお話を伺ってきました!平成30年6月25日、第1回大学発ベンチャー認定称号授与式が行われ、精密林業計測(株)を含む法人10社が正式に「信州大学発ベンチャー」として認定を受けました。(写真後列右から二人目が竹中社長。)ICT×林業=「スマート精密林業」を日本林業のスタンダ(文・柳澤愛由)1957年北海道生まれ。1996年北海道大学農学研究科博士課程修了。農学博士。2005年より教授。研究分野は森林計測・計画学。信州大学先鋭領域融合研究群山岳科学研究所学術研究院(農学系)教授加藤 正人07森を空から情報化
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