NOW111号
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08レーザセンシングとIoTが林業現場で力を発揮川上から川下まで。新たな「木材サプライチェーン」を築くためにこれが「長野モデル」塩尻市事例! 平成29年度は、参画機関が個別取組みを体系化してスマート精密林業のイメージを具体化し、現地検討会で開発技術を公開しました。林業現場での実用化に向け、ドローンレーザによって得られたデータを用いて間伐計画を策定し、それに基づき実際に間伐作業を行うという実証調査を行いました(調査地:北信州森林組合管轄の中野市牛首カラマツ人工林)。 調査内容は次の通り。まずドローンレーザによって森林を計測し、精密な樹冠画像を作成します。そこから間伐基準(※2)に基づいた間伐木を選定し間伐計画を立てます。伐採に用いたのはIoT機能付きハーベスタ。北欧などでは既に普及しており、IoT機能とモニターが付属しているため、事務所から計画に基づいた伐採木の情報を送ったり、オペレータが作業指示を出したりすることもできます。 この実証調査によって、ドローンレーザによる間伐木の選定でも問題なく間伐を実施できることが確認されました。今後より計測精度を上げ、平成30年度での実用化を目指しています。 実証調査で用いられたIoTハーベスタは、木材の樹種、寸法、価格などの造材(伐採木を適当な長さに切って木材にすること)情報が収穫中に自動集計され、即座にモニターに映し出されます。クラウドシステムを経由すれば、収穫した木材情報を現場からリアルタイムで配信することもできます。将来的には、作業者間だけでなく、製材工場や木材センターなどとも情報を共有し、需要と供給のコミュニケーションを生み、新たな木材サプライチェーンを築くことを目標としています。 その際に必要になるのが、情報の閲覧、検索、出力などができる窓口となるようなシステム。コンソーシアムの一員でもあるアジア航測株式会社が開発しているシステムが、「ALANDIS NEO FOREST」です。ALANDISは、レーザセンシングやGISによって得られた森林情報の閲覧や施業履歴の管理などが行えるシステムで、実証実験でも実務の際に用いられました。タブレット端末で連携し、現場での作業支援を行うほか、さまざまな森林情報の閲覧、分析、評価が行えます。 今後、こうしたシステムやICT機器との連携開発、森林情報のデータベース化を進めることで、林業における川上(生産)、川中(製材)、川下(建築など)までを網羅した「長野モデル」の確立が目指されます。加藤教授は、「林業を日本の成長産業にしていくために、このコンソーシアムをより骨太なものにしていきたい」と目標を語りました。ドローンレーザによる森林資源の精密計測まず、レーザセンシング機器を搭載したドローンで調査対象地を計測。収穫前の森林の画像やレーザによる精密計測を実施します。得られた情報から「森林資源量」を算出得られたデータから、樹幹直径、樹冠面積を自動算定。統計解析から胸高直径(DBH)を推定し、DBH、樹高、樹種から計算式を用いて、1本ごとの材積を算出。こうした単木ごとのデータを、解析結果を現場で使いやすいExcelで出力します。計測結果の精度査定のため、現地での森林調査実証実験ではドローンレーザの精度査定のため現地での森林調査も併せて実施。実際の森林の立木位置と本数を目視で確認し、ドローンレーザによる検出率を算出しました。結果、現地調査=70本、ドローン検出立木=57本で、ドローンレーザによる検出率は81%。ドローンレーザは、下層木こそ抽出できていませんでしたが、上層木と中層木、孤立木は全て検出できていました。また、樹高に関してはドローンレーザでの計測の方が優れていることも分かっています。これまで膨大な労力をかけ人力で行っていた森林調査を、ドローンレーザでも行える可能性が示唆された結果です。森林の状況が可視化。3Dモデルの作成も伐採後と伐採前の違いがはっきりと分かる3Dモデルを作成することもできます。写真だけでなく、詳細なデータに基づいた3Dモデルを作成することで、より収穫前後の変化を可視化することができます。ドローンレーザ計測のデータで「樹冠解析図」を作成ドローンレーザで得られたデータを用い「樹冠解析図」を作成。拡大した解析図を見ると、単木ごと詳細な枝ぶりまで把握できていることが分かります。ドローンレーザは表層の様子を単木レベルで解析するには適しているということが、ここで理解できます。データから、精密な樹冠の抽出と樹高の算出作成した「樹冠解析図」から林道や下層植生の情報を除去し、精密な樹冠(樹木の上部で葉が茂っている部分)を単木ごとに自動抽出(特願2016-227207)。詳細な樹木本数を算定します。こうした樹木本数のカウントは森林管理における基本情報。次に、レーザセンシングによって計測されたデータから樹冠内で最も高い所を樹頂点として、高精度な樹高も自動抽出します。 Original image※2)間伐はおおむね5年後に樹冠疎密度が10分の8以上に回復することが見込まれる森林において立木材積の35%以内を伐採することが適正であるとされている平成29年度は「長野モデル」を現場で実践!123456信州大学学術研究院(農学系)教授加藤 正人1996年北海道大学農学研究科博士課程(農学)修了。北海道立林業試験場資源解析科長などを経て、2005年より現職。研究分野は森林計測・計画学。

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