NOW111号
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大学では、活きた言葉の使い方が育まれる。06その中で、いろいろ創(きず)つくことを通して自分自身を強くし、他人と共生していけるようになっていけばいいと思います。学長:例えば、学生の皆さんは信州大学を選択したわけですよね。まずはその自分の選択に自信を持つ。選択した時は、それがいちばん正しいと思って選んでいるはずなので、後からそれを否定しない。否定をしないことで、次につながっていくと思います。藤島:アスリートは目標を達成できたかどうかが非常に分かりやすいですね。小平:時に天国で、時に地獄で(笑)。でも、どちらに転んでも必ずどこかで認めてくれている存在があると思っています。認めてくれる人がいることが心の支えになり、自分の人生を生きる力になっています。藤島:信州大学には47都道府県出身者が集まっているそうですね。文化の違いや、育ってきた環境の違いを乗り越えていくフィールドが、ここにはあるのでしょうか。学長:そうだと思います。自分が今まで当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃないことに気づくことが大切です。当然ショックは受けても、そういうこともあると受け入れていくのが人生だと思います。この信州大学では、そういう機会にかなり出会えるのではないでしょうか。小平:同級生に、雪を見たことのない友達がいたり。いろんな地域の方言だとか。話し方で人との接し方や、雰囲気も変わるので、すごくいい刺激がありました。学長:それに、ほとんどの学生が一人暮らしなので、接触する時間が自然と長くなります。会話を聞いていると「今日はあそこのスーパーが安い」とか(笑)。ある意味、そんなたわいもない会話ができる環境がいいのかもしれないですね。藤島:小平さんは、印象的な言葉も魅力的です。人とコミュニケーションする時に、何か意識されて言葉を選んでいるのですか。小平:大学4年間に、結城先生とたくさんの話をして、そのなかで活きた言葉を育んでもらえました。人と接し、活きた言葉にふれることで、その言葉が自分の表現として生まれ変わってきたと思います。結城:言葉はすごく大事にしています。例えば小平の言う「血液を鍛える」とか。自分たちが考えた共通の言葉が、調子が悪くなった時に、その状態を再現させるための魔法の言葉になるのです。その言葉をたくさん持つことが、技術の積み上げになります。また、小平はオランダでグローバルな言葉を学ぶことで、彼女自身の概念みたいなものがすごく拡がりました。それに伴って、日本語も伸びて、適する言葉を選ぶ能力が向上したのだと思います。藤島:結城先生のように、いずれは小平さんも教える立場に立ちたいですか。小平:将来は学校の先生になりたい、という夢があります。藤島:どういうところで教壇に立ちたいとか、具体的な夢はあるのでしょうか。小平:今のところは中学生を教えたいという思いが強いです。自分自身を振り返ってみると、中学校の時は、進路を決めたりするのに揺れ動く時期。そういう時に背中をポンって押してあげられる先生になれたらいいなと思います。藤島:結城先生から見て、小平さんの先生としての資質などはいかがですか。結城:今はアスリート、選手ですから自分に対して妥協なく厳しい。先生になれば他人の失敗も許せるようになり、もちろん上手に教えられると思いますね。小平:小学校の時、クラス目標に人の失敗を責めないというスローガンを立ててくれた先生がいました。それがすごく記憶に残っていると思いながら、今のお話を聞いていました。藤島:それを覚えているのもすごいですね。小平:いっぱい、いい先生方に出会えてきたと思います。藤島:とてもよいお話です。ありがとうございました。学ぶとは何か? スポーツとは何か?考える機会が多かったことが、卒業後の学びに、自分の生き方に、すごく影響していると感じます。(小平)一度は深く学んでいかないと。深く考えて、そこから学ばないと、将来どこに行っても、それができなくなるんじゃないか?(学長)
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