NOW111号
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考え続ける4年間を。私は、ほぼ毎日東京の通勤電車に乗る。かつては7人掛けの席に座る全員がスマホをいじっていた。そんな少し前までは当たり前の景色に変化が出てきた。中に本を読んでいる人がチラホラいる。世界の街をウオッチしては本を書いている知人によると、ニューヨークでは、特にその傾向が目立ってきたとのこと。私も電車に乗ると、ついスマホをチェックしていた。ニュースを拾い読みしているだけでも、時間はあっという間に過ぎていった。近頃は、スマホを止めて意識して本を読む。あるいは、抱えている企画をじっくり考える。衆人の中の孤独は、驚くほど集中力を発揮する。スタバで仕事をしているのと同じ感覚だ。スマホを片手に何となく過ぎていく時間は怖い。そんな空気が醸成されてきたのではないか? 「頭から汗をかくほど考えて、考え抜け」これは、私が広告会社のクリエイティブ局で後輩社員に言い続けてきたことだ。自分にも課してきた。関東平野では、どこでも深く掘ればガスが吹き出る層に当たると聞いたことがある。一点を深堀すれば、普遍的な価値に行き当たる。先日、私が通年で担当している首都圏某大学の春学期の講義が始まった。毎年、学生から就活についての相談を受ける。どこを志望して良いのか分からない学生には、スマホを持たずに、一泊の個人旅行を勧める。せめて日帰りでも良いのだが、自分一人で考えざるを得ない環境が必要だと思うからだ。自分への答えは、深く考えた自分でしか出せない。4月4日、信州大学の入学式に立ち合わせていただいた。濱田学長は、ディープシンキングという言葉を印象的に使ったご挨拶をされた。新入生代表は、母校の先輩である小平奈緒さんを目標に、学びを深めたいと決意を語った。そして、サプライズで登壇した小平さんの後輩へのエールが続く。「信州大学での4年間は、多くの仲間と学びを育む貴重な時間だった」、「今でも、学びをより深めたいという意識が自分を動かしている」と。小平さんから発せられる言葉は、印象的なフレーズが多い。じっくりと考えて自分の言葉として昇華させているのだろう。考えること、学ぶこと。そんな基本動作が大切なのだと、入学式全体が語っていた。素敵な入学式だった。1985年 ㈱電通入社 以来クリエーティブ局2008~2013年 上海電通赴任2014年 ブランドア㈱創設2013年~ 上智大学講師「メディアと社会(広告論)」ブランドア㈱ 代表取締役(元電通) 信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏藤島 淳入学式に続いて行われた同窓会連合会表彰にサプライズで登壇した小平奈緒さん(所属:相澤病院)信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。 ⑦15

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