NOW111号
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12形状への応用も可能となります。例えばシルクスポンジ(※写真2)は、シルク水溶液を凍結融解させ作った多孔質構造の材料です。(※写真3)「シルクスポンジはシルクならではの柔軟性、風合い、手触り感も優れた材料だと思っています。穴の大きさや構造はコントロールすることもできます。このシルクスポンジも再生医療細胞の足場材料として利用出来ますが、その他、さまざまな応用の可能性があると考えています」と玉田教授は期待を寄せます。再生医療に用いられるiPS細胞などの幹細胞は感受性が強く、移植するのみでは細胞が接着する前に死滅してしまい、十分な効果が得られないことが懸念されています。その課題を解決するには、細胞周辺に生体環境に近い環境を与え、その機能を最大限発揮させるための優れた「足場材料」の存在が不可欠です。シルクスポンジなどはその有効な材料として期待されているのです。シルクと水(シルク水溶液)、そして信州大学を代表するナノファイバー研究との融合によって生まれた特許技術が、シルクナノファイバーです。ナノファイバーは、1本の太さが500ナノメートル以下、髪の毛の200分の1の細さの極細繊維(※写真4)。液体や気体のろ過、電池材料や疎水性に優れた高機能繊維材料、複合材の強化材料など、用途は非常に幅広く、産業的にもいろいろな所で用いられています。ナノファイバー研究は信州大学を代表する先端研究のひとつでもあり、材料研究、製造、評価解析に至るまで、多彩な研究が行なわれています。特に再生医療用材料として最適なのが、シルクナノファイバーで作ったマット(不織布)です。シルクナノファイバーマット(※写真5)は、シルク水溶液を電界紡糸(エレクトロスピニング)(※1)装置で霧状に噴射(紡糸)し、マット状に加工することで出来上がります。「シルクナノファイバーマットは生体組織に非常に近い構造をしているので、再生医療用材料として最適だと考えています。水とシルクのみが原料なので、環境に優しいプロセスで製造できることも、この技術の特徴ですね」と玉田教授は話します。これまで述べてきた通り、人にも環境にも優しいさまざまな再生医療用材料の開発に最適な特許技術だといえます。再生医療分野や新しい視点での新材料開発にご興味のある方は、信州大学発の特許技術「シルクナノファイバー」の活用を検討してみてください。信州大学のナノファイバー研究は再生医療分野に留まりません。信州大学には試作設備もあるので、サンプルの作成も可能で、ワンストップで企業のニーズにお応えすることができます。今回ご紹介した特許、シルクナノファイバーも信州大学を代表するナノファイバー研究のひとつ。産業界からの新しいアイデアや用途開発で、さらにナノファイバーの応用範囲が広がり、新たなイノベーションにつながっていくのだと実感しました。信州大学を代表するナノファイバー研究との融合ナノファイバーで広がる用途、イノベーション!持つ玉田靖教授官の再生が難しいため、組織再生を担う細胞を靖教授(繊維学系)が開発した「シルクナノファイ環境にもやさしい再生医療用材料として期待さ未来を支える技術です。(文・柳澤 愛由)※1)溶媒に材料を溶解した溶液を注射器(シリンジ)に入れ、高電圧をかけながら射出する(※写真6)ことで、ナノファイバーを作成する方法(※写真3)シルクスポンジの構造を3次元解析、多孔室構造とわかるー」新技術!Nanofibers(※写真2)これがシルクスポンジナノファイバーの研究領域、非常に広い範囲に展開されている評価・解析◆力学特性評価法◆エレクトロスピニング◆大学発ベンチャー(株)ナフィアス◆シルク◆キチン◆キトサン◆セルロース◆レーザー延伸法◆染色製造材料信州大学のナノファイバー研究(※写真4)ナノファイバー(※写真6)ナノファイバー製造装置、高電圧下で水溶液が霧状に噴出されマット状になる(※写真5)(※写真5)
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