NOW111号
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11「シルク水溶液」が、実はすごい!ご存知の通り、シルクはカイコという生物が生産する生物資源で、なんと約8,500年以上前から利用されてきた優れた天然由来の材料です。衣服だけでなく、絹糸は外科手術で傷を縫合する糸として、古くから、そして現在でも臨床で使用されています。それほど生体への安全性、親和性が確かな材料であり、最近の研究では、シルクから作られた材料が再生医療における細胞の足場材料として、優れた性質を示すことが多く報告されています。玉田教授は、シルクの構造や性質を新たな視点で解析し、化学修飾でその機能を変化させたり、タンパク質工学や遺伝子組み換えなどの手法を用いて、再生医療分野でのシルクの活用を目的とした、機能性シルク素材の創出を目指す研究を進めてきました。その中で生まれたのが、今回ご紹介する「シルクナノファイバー」です。このシルクナノファイバーの最大の特徴は、シルクと水のみを原料に使用しているという点にあります。「一般的に、再生医療用材料は人体や環境への悪影響が懸念される溶剤を用いているケースが多いのです。しかし、今回のシルクナノファイバーは人体への親和性が高いシルクと、無害な水を原料に使っているので、より安全な材料となります」と玉田教授は話します。生体に優しいシルク。その構造を徹底解析シルクナノファイバーの原料は、シルク水溶液(※写真1)です。シルクはカイコの体内では水溶液の状態ですが、一旦糸になると不溶性に変わります。しかし高濃度塩水溶液には溶解するため、それで溶解させ透析で塩溶液を取り除けば、シルク水溶液ができあがります。“水で加工できる”という性質もシルクだからこそ。シルクを水に溶かすことによって、ナノファイバーだけでなく、フィルム状やスポンジ状など、さまざまな信大特許信州TLO映像制作コラボ信大動画チャンネルで配信中!・ 信州大学のホームページから!Vol.4Patent of Shinshu University実験室で見せてもらった美しい繭。シルクナノファイバーの原材料となるナノファイバー製造装置の前でシルクナノファイバーマット(※写真5)を手にiPS細胞の開発以降、再生医療技術は加速的に進化し続けています。しかし、細胞だけではすべての組織や器支えるための足場材料の開発も重要な課題となってきました。今回ご紹介する特許は、信州大学学術研究院玉田バー」です。キーワードは、「シルク」と「水(シルク水溶液)」、そして「ナノファイバー」。天然資源を用いた、人にもれています。シルクとナノファイバー研究の融合という、繊維学部ならではの深い造詣から生まれた、再生医療の(※写真1)これがシルク水溶液、多様な形状のシルク材料の原料「シルクナノファイバ再生医療などに役立つSilk×Water×※信州大学の研究シーズを技術移転する(株)信州TLOが、特許技術の見える化を推進する特許の試作と動画制作(平成29年度中小企業知的財産活動支援事業)により実施特許特集④シルク繊維立体構造体の製造方法

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