NOW110号
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せたものから得られる上澄み液のこと。乳酸発酵は長野県の木曽地域で古くから作られる「すんき漬け」(カブ菜を乳酸発酵させた漬物)に代表される伝統的な発酵方法です。中村准教授、小山社長らは、この発酵キョウバクに血圧上昇抑制効果があること、その有効成分が多量に含まれる「コリンエステル」であることを突き止めました。「これまでどんな機能性食品を試ナスは夏から秋にかけての食卓の定番野菜。和洋中、どんな料理にも合う万能選手です。しかし、その栄養価を問われても、はっきりと答えられる人は少ないのではないでしょうか。「“ボケ”ナスなんて罵り言葉があるように、『ナスには何の栄養もない』と思っている人が少なくありません。でも、結構高い効能があるんですよ」。(株)ウェルナス社長の小山正浩さんはそう話します。信州大学大学院で中村浩蔵准教授のもと研究に励んだ際の大発見が、2016年に明らかになった「ナスには『コリンエステル』が多量に含まれる」という新事実。ピーマンやニンジン、トマトといった定番野菜と比べても、なんと約1,000倍以上もの量でした。その成果をもとに2017年5月、(株)ウェルナスを設立しました。「コリンエステル」は神経伝達物質のひとつで、交換神経活動抑制作用があります。人の活動時に高まる交感神経の活動が抑制されることで、血圧上昇を抑え、リラックス効果も期待できます。また必要以上に体内にある場合は酵素によって分解されるため、効き過ぎるということもありません。「コリンエステル」は新発見ですが、ナスは古くから食されてきたとおり、安全性はきわめて高いのです。さらにこの成分は熱にも強いことがわかり、さまざまな食品への応用が可能で機能性食品開発にはうってつけの素材なのです。「リラックス効果は妊娠率を高めることにつながります。“秋茄子は嫁に食わすな”ということわざも、子沢山になると家族を養いきれなかった昔の人々が、ナスのそんな効能に気付いていたのかもしれませんね。しかし今はその逆、弊社のプレゼン資料のタイトルは『秋茄子は嫁に食わせろ!』です(笑)」(小山社長)。取材当日、小山社長のネクタイの図柄をよくよく見ると…、ナスのイラスト入りで“I LOVE NASU”。「このネクタイ、なんと売ってたんですよ!これは即、買うしかないかなと思って(笑)」と小山社長。「ナスグッズを集めるのが趣味」ということらしく、ただならぬ“ナス愛”を感じ、さらにお話を伺っていくと、そこには並々ならぬドラマがありました。小山社長は遺伝的に高血圧体質で、高校時代から眠りが浅いといった睡眠障害にも悩まされてきたそうです。「高校時代には既に最高血圧値が180くらいあって…。でもまだ薬は飲みたくなかったのでさまざまな機能性食品を試しましたが、効果はありませんでした」。そうしたときに中村准教授の研究に出会い、2008年、信州大学大学院農学研究科応用生命科学専攻(修士課程)に進学。まずは、中村准教授が長年取り組んできた「発酵キョウバク」の研究に加わりました。「発酵キョウバク」とは、長野県特産のソバの若芽(そばスプラウト)を乳酸発酵さ秋茄子は嫁に食わ「せろ」!切り札!“ナ「発酵キョウバク」との出会い、小山社長の“ナス愛”日本学術振興会特別研究員JST科学技術特別研究員を経て2002年より信州大学農学部伝統的な地域資源をリバイバルして、新しい機能性食品を開発し実用化する研究に取り組むナスはご存知のとおり、古くから食され、誰外なことに一昨年(2016年)、血圧を下げる効含まれていることが分かりました。この、未来のかもしれない新事実を突き止めたのは、(株)恩師である信州大学学術研究院(農学系)中村信州大学発ベンチャー特集の第1弾は、このとに、新たにヘルスケアビジネスに参入する、ンチャー、株式会社ウェルナスをご紹介します。機能性食品&パーソナルヘルスケアサービス株式会社高血圧対策のナス柄のネクタイのほかにも、ナス歯磨きなど多くのマニアックなナスグッズを集めているのだとか。「ナスには感謝しているので」と“ナス愛”が止まらない小山社長。長野県上田市常田3-15-1Fii施設508号(2)代表取締役(農学博士) 小山正浩氏コア技術:コリンエステルの定量技術と生理活成発現メカニズムに基づく食 食品素材におけるコリンエステル含有量を比較した資料。ナスは圧倒的!信州大学学術研究院(農学系)准教授中村 浩蔵07

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