NOW110号
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15期待と課題を抱え、2020東京へ。信州大学教育学部卒業生の小平奈緒選手がスピードスケート女子500メートルで日本女子初となる金メダルを獲得するなど、日本のメダルラッシュに沸いた平昌冬季五輪・パラリンピックが終わった。小平選手と銀メダルの李相花選手との友情や、結城匡啓コーチ(信州大学教育学部教授)らと歩んだ13年に及ぶ物語など、たくさんの感動と涙を私たちに与えてくれた。次は2020年の東京五輪となる。この項では現地で感じた東京への期待と不安、そして課題をまとめたい。まずは外国人消費への期待だ。競技が開かれた平昌・江陵地区へは、首都ソウルから高速鉄道「KTX」やバスで入る外国人がほとんどだった。五輪期間中にはソウル市内の百貨店や繁華街で、観戦に訪れたと思われる外国人を多く見かけた。街で話を聞いた40代のポーランド人夫婦は10日間の休みを取って、韓国国内、特に地方を観光するという。東京五輪でも同様に訪日外国人による消費が見込まれるほか、外国人ならではの目線で新たな地域の魅力も見つけてくれるだろう。一方で不安も多く感じた。開会式直後のバス輸送の混乱や競技会場の天候悪化などは日本でも大きく報道された。それに加えて自分が現地で感じたのは、荷物預け入れスペースの圧倒的な不足だった。スケートやカーリングが行われた江陵地区の駅にはコインロッカーが1か所しかなく、常時満杯で使用できなかった(写真1)。2020年の訪日外国人は政府目標で4000万人と、2017年の約1.4倍の水準にあたる。特に個人客が増加する傾向にあり、駅などのコインロッカーは大きく不足することが予想される。最近では美容室やカフェ、郵便局などを活用した荷物一時預かりサービスが開始されたが、さらなる早急な対策が必要だと感じた。また、多言語対応も引き続き課題となる。平昌・江陵地区ではタクシーをはじめ英語が全く通じないところが多く、困惑することが多々あった(写真2)。東京都内の公共交通機関では、行き先表記や音声案内に英語が入ることが一般的になってきたが、地方に行くとまだまだ厳しい現実がある。とはいえ、携帯電話やタブレットを活用した音声翻訳などで困っている外国人を助けることは十分できる。人と技術をフル活用した「言葉のバリアフリー化」が東京五輪でも問われるだろう。東京五輪まで2年あまり。平昌の教訓を生かして、よりよいおもてなしをするために、まだ課題はたくさん残っている。(写真1)江陵駅に唯一あるコインロッカー。故障中の箇所もあった信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。 ⑥2002年 朝日新聞社入社。広告局の外務営業、報道局の記者を経て2013年 コンテンツプロデュース部2015年 中東へ留学2016年 メディアビジネス局朝日新聞社メディアビジネス局 信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏川崎 紀夫(写真2)江陵の五輪会場近くのバス停は韓国語表記のみだった

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