NOW110号
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09非ニュートン流体の「ダイラタント流体」に着目まず、特許を取得した「繊維複合流体」の構造をご説明します。写真(※1)が、繊維複合流体のサンプルです。弾性のある資材の内部に繊維を入れ、繊維の周りを「ダイラタント流体」で満たした構造をしています。この繊維複合流体を開発するきっかけは、釣りえさなどにもよく利用される海洋生物“ゴカイ”の遊泳を再現したロボットの製作でした。まるで本物のように水中を動くロボットのフィンの動きと流体の関係性がヒントとなり、今回の技術開発に至ったといいます。魚の尾びれの動きの速さのことを「揺動速度」といいます。自然界の生物は、この揺動速度によって尾びれ(フィン)の柔軟さを変化させています。力学的には、ねじれや曲げに対する変形のしづらさを「剛性」と呼び、剛性を変化させることのできる特性を「可変剛性」といいます。小林教授は、長年、水中を動く生体のメカニズムを活かしたロボットの開発や研究を行っており、その中で、自然界の生物のような柔軟な動きを実現する、可変剛性機能を備えたフィンの開発を進めていました。しかし、これまで可変剛性機能を備えるには、何かしら機械的海にいる、あの“ゴカイ”のロボット製作をきっかけにな機構を必要とすることがほとんどでした。「生物が水中を進むときの尾びれの柔軟さ、つまり可変剛性を、機構を用いずに実現するよりスマートな構造体ができれば、さらにさまざまな応用が期待できます。そこで着目したのが『ダイラタント流体』でした。そこに『繊維』を組み合わせることで、その特性をより助長させています」と小林教授は説明します。それでは、繊維複合流体のベースとなっているダイラタント流体の特性についてご説明します。ダイラタント流体の最も身近な典型例は、水と粉末の濃度の高い混合物。例えば、非常に濃い水溶き片栗粉もダ剛性が変化する新生物と流体の密接な関係から生まれた特許特集③「ダイラタント流体を用いた複合材料」信大特許信州TLO映像制作コラボ信大動画チャンネルで配信中!・ 信州大学のホームページから!Vol.3Patent of Shinshu University繊維の逆方向には容易に曲がる(柔らかい)魚の尾びれ(フィン)の動きの速さを「揺動(ようどう)速度」と言い、動く速さで、フィンの硬さ、柔らかさなどが違う。速く泳げばフィンは硬く、ゆっくり泳げば柔らかい。今回の特許の原点とも言える。※1)ダイラタント流体を用いて作った「繊維複合材料」のサンプル。写真で速く曲げるとその差は際立つ魚の尾びれは、水中を進む速さによって硬さが変わるという特性があります。例えば、水中を高速で移動するイルカの尾びれは、鋼のように硬そうですが、金魚の尾びれのように、ゆっくり移動している時のイメージはとても柔らかそうです。もし、速い動きも遅い動きも、一つの尾びれで再現しようとするのなら、速さに応じて硬さを変化させる必要があります。このようなことを可変剛性と呼び、その方法の一つとして「ダイラタント流体」という物質の特性を利用します。いつもは存在すら忘れていても、いざという時には強力に機能する…このユニークな特性を、より便利で新しい製品開発に活かせたら…今回ご紹介する特許は「ダイラタント流体」+「繊維」=「繊維複合流体」。信州大学学術研究院(繊維学系)小林俊一教授に、お話を伺ってきました。(文・柳澤 愛由)小林教授が作った、海にいる「ゴカイ」の動きを再現したロボット。見事に水中を泳いでいる。「繊維複合流※信州大学の研究シーズを技術移転する(株)信州TLOが、特許の試作品と特許技術の見える化を推進する動画制作(平成29年度中小企業知的財産活動支援事業)により実施
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