医学科研究紹介_2017-2018
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6君の体は毒性脂質で囲まれている現在の生活環境は危険な物質に接触する機会に満ちています。特に、毒性脂質は持続的に体内に取り込まれて、多様な疾病を引き起こすことが社会問題になっています。過剰なコレステロール・飽和脂肪酸の多い中性脂肪・トランス脂肪酸の多い食品(マーガリンやショートニングを含有)などは肝臓・心臓・腎臓・血管などに障害を生じます。水田で大量に使用される除草剤(2,4-D)は精巣や肝臓を犯します。過剰飲酒は脳神経・肝臓・血管などを犯します。これらの毒性発現機構を知ることは予防法の開発につながります。・様々な毒性脂質による疾患発症分子機構の解明・遺伝子改変マウスを用いた核内受容体(PPARa)の機能探索生活環境中の多様な物質の毒性度を理解することが重要です。タバコのように廃止すべき物・トランス脂肪酸のように摂取量を制限すべき物・コレステロールのように必要量と過剰量の境界を明確にする物などが決まれば、安全で健康的な環境が作れるはずです。特定の研究対象だけでなく、より多くの毒性物質について学習することが重要です。職場・家庭・公共施設などの食環境改善に役立ちます。専門性を極めれば、多種多様な就職分野における研究職に従事できます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像代謝制御学(教授 青山俊文)腹腔鏡所見:非アルコール性脂肪性肝炎で      急速に肝硬変に移行した症例マウス精巣ライディッヒ細胞の電子顕微鏡写真除草剤(2,4-D)を経口投与したマウスでは、テストステロン過剰生産により原料となるコレステロール(粒子)が枯渇するPPARaノックアウトマウスでは枯渇が生じない病気のメカニズム解明と治療法の開発オリジナルの遺伝子改変マウス作成から解析まで信州大学では唯一、遺伝子改変マウスを作成する技術を有する教室です。ゲノム編集 (クリスパー法)の新技術開発なども行っています。癌、動脈硬化、心不全、糖尿病、腎不全、脳梗塞、肝硬変、肺線維症などの疾患を対象に、疾患と関連する遺伝子の研究から、創薬をめざしています。生体内の恒常性維持機構と、疾患発症のメカニズムを研究し、その成果の応用のため、現在までに創薬に関する複数の国際特許を取得しています。日本科学未来館(東京お台場)のサテライトラボでは、創薬にむけた次世代疾患モデルマウスのプロジェクトを行っています。・疾患モデル動物や培養細胞を用いた病態解明、新規治療法開発・循環作動性ペプチドの血管発生、血管新生、癌転移における役割・クリスパー法による新規遺伝子改変マウスの樹立、解析・心臓、血管、肝臓の再生医療研究現代の医学をもってしても治せない病気があります。医学研究者の使命は、その原因を探り出し、新しい治療、診断法につなげることです。新規の遺伝子改変マウスを、自分たちの手で、しかも世界最速で作ることで、今まで不明だった遺伝子の働きを世界で初めて発見することも可能です。新しい生命現象を、自らの手で見つけることは、大きな感動や興奮をもたらしてくれます。当教室では、学生が積極的に学会発表を行い、これまでに多数の学会賞を受賞し、奨学金を得るなどの活躍しています。医学研究におけるグローバルなスキルを身につけることで、卒業後は、大学や企業の研究職に就き、リーダーシップを発揮しています。(教室HPを参照下さい。)主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像循環病態学(教授 新藤隆行)正常マウス(左)と、肥満モデルマウス(ob/obマウス)(右)正常マウスと、血管特異的RAMP2ノックアウトマウスの肝臓と腎臓日本科学未来館(左)と、未来館研究室(当教室のサテライトラボ)見学ツアー(右)

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