医学科研究紹介_2017-2018
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34手術用顕微鏡を使用した安全で、低侵襲な脊髄手術で、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています低侵襲脊椎脊髄 班(チーフ:講師 伊東清志)脳神経外科学低侵襲脊椎脊髄班は、背骨とその中にある神経(脊椎脊髄神経)の病気を研究し治療するチームです。脊骨や脊椎脊髄神経を障害し、手の痺れ・痛み、運動麻痺、歩行障害、下肢痛などの原因になりうる病気を、手術用顕微鏡を使用して、【安全】かつ【低侵襲】な手術を実施し、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています。特に、脊髄にできる腫瘍の治療に力を入れています。・ 頚椎症、腰部脊柱管狭窄症などの頚や腰の病気に対する低侵襲で安全な手術方法の工夫・脊髄腫瘍に対する安全な手術方法の改良と開発・手術の時に使用する器具の改良と開発いままでの背骨(頚椎、胸椎、腰椎)の手術は、肉眼で行われることが多く、手術成績は必ずしもよくありませんでした。「脊椎や脊髄の手術をうけると、術後寝たきりになる。だから手術は受けない」というお話をよく聞きます。それは違います。手術用の顕微鏡を使って非常に丁寧な手術をすれば、いままで悩んでいた手や足の「しびれ」や「痛み」から解放されます。私たちは、手術の方法や手術に使う器具を改良する研究を行い、治療成績をさらに改善しようと日々努力しています。卒業後は、脳の手術の研修とともに、頚髄、胸髄、腰髄、末梢神経(正中神経、尺骨神経など)の疾患の治療、研究にあたります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像神経内視鏡を駆使した新たな脳神経外科手術の開発 ― 低侵襲手術をめざして ―神経内視鏡治療 班(チーフ:助教 荻原利浩)脳神経外科学脳神経外科手術に代表される顕微鏡手術は、大きな皮膚切開や開頭、脳の圧排など、患者への負担が大きな手術になります。この侵襲性を軽減するため、近年、顕微鏡の代わり内視鏡を用いた神経内視鏡手術が急速に普及しました。この神経内視鏡手術は、治療困難であった脳深部(頭蓋底)病変や脳室内病変などを、低侵襲で治療することが可能となる画期的なものです。信州大学脳神経外科の神経内視鏡チームは、脳疾患に対する、神経内視鏡を用いた低侵襲手術の発展をテーマとし、様々な研究に取り組んでいます。・ロボティックステクノロジーを駆使した神経内視鏡手術の研究・経鼻頭蓋底手術における髄液漏修復法の研究・神経内視鏡手術における新規医療機器開発医療界全体で低侵襲性が重要視される昨今の風潮の中で、脳神経外科手術も侵襲性の大きい開頭手術より、低侵襲の神経内視鏡手術の適応範囲が拡大しています。今後さらに研究が進み、神経内視鏡手術が発展することで、内視鏡内蔵型ロボットの開発、そして近い将来、脳神経外科手術におけるロボティックサージェリー時代の幕開けが訪れると確信しています。神経内視鏡手術は夢と希望にあふれています。今後間違いなく発展していくであろう神経内視鏡手術分野の研究を通し知識や技術を身につけることで、将来幅広く活躍できると考えています。卒業後の可能性は無限大です。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【脊髄の裏側にある腫瘍をとる実際の手術写真】手術用顕微鏡で観察しているので大きく見えるが、実際の脊髄の幅は、狭いところで8㎜くらいしかなく非常に繊細なテクニックが要求される【サージカルボディーサポート】いままで不安定であった立位での手術が、我々が開発したこの器具により、体が安定し、より安全に行うことが可能となった低侵襲手術をめざしてロボティックテクノロジーを駆使した、新たな神経内視鏡手術の開発に取り組んでいます。(イメージ図)神経内視鏡手術に用いる様々な手術機器神経内視鏡手術で脳の深部の観察や手術操作が可能

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