医学科研究紹介_2017-2018
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13法医学は死因究明に関する社会的責務を果たしています高い精度で個人の身元確認が可能なDNA鑑定ですが、死後長時間が経過しているご遺体や高度損壊のご遺体からは状態の良いDNA試料が得られず、個人識別が困難となります。そこで、このような劣化したDNA試料からでも十分な身元確認を行うための分析技術の開発に、日々研究を重ねています。これまで、この技術を応用して分析を行い、世界で初めて縄文時代人のY染色体系統分類に成功しています。このほか、一見健康そうな人が突然亡くなる「突然死」のなかで、高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連、あるいは向精神薬服用者の突然死の原因究明についても研究を進めています。・DNA劣化試料に対する分析法の確立と鑑定精度の向上・SNP解析によるY染色体系統分類法・高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連性・向精神薬服用者の突然死と遺伝子変異の関連性法医学が担っている死因究明業務は、社会的に極めて重要な責務と位置付けられています。そして、精度の高い死因究明を実践していくためには、法医学研究の一層の発展が必要であることは言うまでもありません。将来的に法医学を専攻する医師の場合、法医認定医や法医指導医の資格を取得し、死因究明の最前線で活躍することができます。また、医師でなくても、DNA分析や薬物分析の技術専門者として活躍する場が多くあります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像法医学(教授 浅村英樹)親子鑑定例心筋への広汎なアミロイドの沈着G1927A(G643S)向精神薬服用者急死例の半数近くで特定の遺伝子の変異が認められた再生医療で様々な病気を治療する人の体は元々ひとつの受精卵が心臓、脳、筋肉、腎臓、肝臓など様々な約200種類の細胞に"分化"することにより形成されます。しかし出生後は分化能が失われ、病気によって障害された臓器の修復は困難となります。そこで私たちは、受精卵と類似した性質をもつ"幹細胞"を最新の科学技術によって再生医療に応用し、病気を治療するための研究を行っています。・ 多能性幹細胞を用いた心臓再生治療   幹細胞から心臓の筋肉(心筋細胞)を作り心臓病サルなどに移植し、治療効果を検討しています。さらに幹細胞からバイオペースメーカーを作り、有効性を確かめています。・ 骨格筋再生治療筋   ジストロフィーなどの筋疾患に対して、再生・遺伝子治療を組み合わせて新規の治療法を開発します。医療は日々進歩していますが、未だに根本的治療法が受けられず病気によって苦しんでいる患者さんが多くいます。例えば末期の心臓病では、臓器提供者の不足により心臓移植が受けられずに多くの患者さんが亡くなっています。このような患者さんに対して、再生医療という全く新しい治療が今後急速に進んで行くことが期待されます。主な研究テーマ研究から広がる未来再生医科学(教授 柴 祐司)細胞培養室での光景; iPS細胞、心筋細胞などを培養しています教室では大学院教育を通じて、論理的思考力を育てます。また、継続して研究できるよう奨学金やリサーチアシスタント制度などを利用して生活サポートを行っています。さらに、海外留学希望者には積極的に支援し、将来国内外で活躍するリーダーを育成します卒業後の未来像

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