保健学科_研究紹介2017-2018
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―36―心不全患者に合併する認知機能障害の病態メカニズムを明らかにし、心不全患者に対する新たな作業療法介入の確立を目指す。信州大学医学部附属病院の療法士と協力し、多職種で構成されるチームで心疾患の患者さんに対する臨床や研究を行っている。(図)左:作業療法の様子    右:心疾患に対する研究チーム 作業療法学専攻心不全患者の認知機能障害―病態の解明と新たな作業療法介入― 心疾患は日本人の死因別死亡率の第2位を占めています。心不全は心疾患の終末像とも呼ばれ、今後も患者数は増加の一途をたどり、2035年までに130万人に達すると言われています。心不全患者の最大80%が認知機能障害を合併することが海外の研究で報告されており、近年、心不全患者の認知機能障害が着目されつつあります。認知機能障害を合併する心不全患者は、薬の管理を自分で行うことができないなど、自身での体調管理が困難になる場合が多く、病状を悪化させる原因の一つとなります。佐藤研究室では、現在までに詳細が明らかにされていない心不全患者の認知機能障害の病態を明らかにし、心不全患者に対する新たな作業療法介入の開発を目指していきたいと考えています。信州大学医学部保健学科を卒業。卒業後、上伊那生協病院、信州大学医学部附属病院での勤務を経て、2016年4月より現職。現在は信州大学大学院医学系研究科博士前期課程2年。佐藤 正彬 助手実践作業療法学 リハビリテーションの対象となる心疾患の患者さんは増加傾向にあり、作業療法士も心臓リハビリテーションチームの一員として役割を果たしていくことが求められています。心不全に合併する認知機能障害の病態を解明することで、予防的介入や治療的介入の開発に貢献することができます。臨床では心疾患の患者さんの身体機能障害だけでなく、精神や認知機能の障害を捉えた生活支援を展開することができます。 作業療法士は医療機関から地域・行政など幅広い分野で活躍しています。どの分野においても、日頃から疑問を持ち、それを解決していくプロセスが重要です。患者さんの生活を幸せなものにするために、自身の努力を惜しまない職業人を目指していきましょう。研究から広がる未来卒業後の未来像点はきっとあなたの人生に役立つはずです。集団運動遊びプログラム:それぞれの発達の目標に応じてスタッフが関わる作業療法学専攻すべての子どもにステキな未来を!作業療法士が子どもの発達を支援する 乳児院における作業療法介入の有効性について研究しています。乳児院は様々な家庭の事情で、家庭での生活が難しい乳幼児が入所している施設です。その中で、発達の心配なお子さんや、生活の中で困りごとがあるお子さんについて相談を受け、作業療法の視点から助言をしていますが、こうした活動が子どもの発達や生活にとって有益であるかを検討しています。現在は、個別の対応だけでなく、より多くの子どもの発達を促すための集団遊びプログラムの開発も行っています。信州大学医療技術短期大学部作業療法学科卒業。同大学大学院教育学研究科学校教育専攻(特殊教育)修了(修士・教育学)。専門は発達障害児の作業療法。赤羽 美和 助教2015年より現職。 現在、子どものリハビリテーションは、病院や専門の施設で行われていますが、これからは、地域、施設、幼稚園・保育園、学校など、生活の場での支援が求められる時代になります。作業療法士が、医学・発達・心理・生活・環境など、多面的な視点で子どもの状態を把握し、根拠のある支援を行える職種であることを客観的に示していくことが、生活の場で他職種と協働するために必要となります。 小児発達を専門とする作業療法士は、今はとても少ないですが、今後はニーズが高くなってきます。様々な子どもに関わり、家族を支えていくことは簡単ではありませんが大きな喜びもあります。子ども達のステキな未来を夢見て発達を支えるのが作業療法士です。実践作業療法学研究から広がる未来卒業後の未来像生活支援:上手に食べられない子どもに食事の支援を行う発達支援:おもちゃを使って両手遊びを練習する

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