保健学科_研究紹介2017-2018
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―25―検査技術科学専攻薬剤耐性菌を俯瞰する 新規抗菌薬の開発が遅滞するなか、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)などの世界的広がりがヒト臨床分野及び公衆衛生上深刻な問題となっています。これら薬剤耐性菌の早期検出は医療関連感染対策の要であり、研究グループでは臨床治療上重要なESBL産生菌や新型CPEなどの新知見を報告してきています。さらにヒトと密接に関わる愛玩動物、食品、生態系環境にまで研究対象を広げ、ダイナミックな薬剤耐性菌の循環動態について研究しています。また、新生児重篤感染症の主要な原因菌であるB群レンサ球菌で、治療第一選択薬のペニシリンに低感受性を示す菌株を確認し、この分野での世界の研究をリードしています。 46億年の地球史のなかで微生物は様々な天変地異を乗り越えて生き残るべく、多様化、進化を繰り返してきました。病原性遺伝子や薬剤耐性遺伝子を、ヒトに定着性の高い遺伝系統の臨床細菌が安定的に保持しながら伝播・拡散してゆく戦略は臨床の現場でしばしば遭遇する事象です。ヒトとそれをとりまく生態系環境の中で薬剤耐性菌の動態をとらえることで、人類が直面している耐性菌問題の解決に貢献します。 自らが主体となって研究課題の設定、適切な解析アプローチの構築、慎重且つ正確な実験、多面的・多角的な考察に取り組めるような論理的思考力、実行力、発言力を培う努力がこれからの未来に必ずや役立つと信じています。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像ヒト-生態系環境における薬剤耐性菌循環動態解明のための包括的研究本専攻の学生と高校生が共同でLFプラズマジェットによる殺菌効果の実験検査技術科学専攻眼に見えないとっても小さな生き物(細菌)を相手にしている 地球上には多くの眼に見えない微生物が生息しています。それらは私たちの身体の中にもすぐ間近にもいますが、ほとんどは無害ですし、その微生物の恩恵をいただいていることもたくさんあります。しかし中には悪さをするものがいます。悪さをするものを少しでも制御できないかと、眼に見えない微生物、特に細菌を相手に研究をしています。 例えば、自然の恵である雨水を有効活用するための雨水貯留槽の設置が増えていますが、雨水による健康被害への危惧から細菌学的汚染を調査解析し、雨水貯留水をより安全に利用するために細菌制御法について研究しています。また、LF(低周波)プラズマジェット生成装置を開発した高校生と一緒に、その殺菌技術の研究に取り組んでいます。信州大学医学部附属臨床検査技師学校卒業。同大学院工学系研究科博士前期課程修了後、同博士後期課程修了(工学博士)。信州大学医学部保健学科助教を経て、2015年准教授。小穴 こず枝 准教授北里大学大学院医療系研究科医科学専攻環境医科学群環境微生物学修士課程修了後,同大学院医学専攻環境医科学群環境感染学博士課程修了(医学博士)。2014年医学部保健学科に着任。長野 則之 教授 細菌は肉眼では見えないので顕微鏡を使わないと実物を見ることができないとても小さな生物ですし、困った悪さをすることもあります。しかし、ヒトとは常にいつまでも共存していかなければいけない関係でもあります。時と場合によっては細菌の数を減らしたり死滅してもらわなければなりませんので、そんな細菌の制御法を研究しながら、いかにうまく付き合っていくかを目指しています。 臨床検査技師として、細菌検査・生理検査・病理検査・検体検査などさまざまな検査分野で、また、病院だけではなく、検査センター、企業、大学等で働くことができます。そのような活躍している卒業生と学会などでお会いするのを楽しみにしています。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像ヘリウムガスに電圧をかけるとLFプラズマが生成される-80℃保存の菌株を実験に使用するため“起こし”ている研究グループではβ-ラクタマーゼの多様化に組換え事象による新たなメカニズムが存在することを明らかにした薬剤耐性菌の表現型スクリーニングと耐性プラスミドの確認 - (ESBL) (CPE)ESBLCPEB , ()2014 46 - -

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