保健学科_研究紹介2017-2018
18/40

―16―看護学専攻小児・母性看護学領域オキシトシンが及ぼす母子関係への影響に関する研究 オキシトシンは脳下垂体後葉という部分から分泌されるホルモンです。これまでの研究では、陣痛を起こしたり母乳分泌を促進したりする作用があると言われてきました。近年、対人関係に関与することが明らかとなり、さらに、リラックスをさせたり痛みを緩和する作用があることがわかってきています。一方、過剰に分泌されることによって攻撃性が増加することなども少しずつわかってきました。オキシトシンがヒトにどのように作用するかが分かれば、看護・助産ケアに活用できるのではないかと考えています。現在は検査技術科学専攻の先生にご協力いただき、唾液や血液からこの濃度を測定する研究をしながら、母子の愛着や精神的安定性についても研究しています。 看護ケアや助産ケアを実践する際に、ヒトの体の仕組を知ることはとても大切です。助産師が試薬や実験機器を取り扱うイメージは薄いかもしれません。周産期に重要とされているオキシトシンに注目し、助産師として研究することで、お母さんや赤ちゃんへのケアがより充実し、順調な育児や近年増加している虐待を予防するケアにつながる可能性があります。 看護師、保健師、助産師どの職業にも母子ケアや家族への看護が大切です。卒業後は病院等の医療機関に就職する学生が多くを占めています。研究を通じて、根拠をもつことの大切さを学び、臨床現場に活かすことが出来ます。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像実験室でのオキシトシン濃度測定の様子我が国の合計特殊出生率は1.44(2016年)と、先進国の中でもかなり低い水準。更に出生数は97万人と、初めて100万人を下回った。ELISAキットを用いた比色競合法による実験プレートお母さんは赤ちゃんを大切そうに抱っこ育児や家事の大部分を、母親である女性が担っている現状。男性がもっと家庭に関わる時間をもてるような社会が重要。看護学専攻小児・母性看護学領域女性が仕事と子育てを両立できる社会、安心して子どもを産み育てることができる社会 日本だけでなく世界では多くの女性が社会で活躍しています。女性も男性も同じように、自分自身がこれまで勉強したり培ってきたスキルやキャリアをもっと仕事や社会で活かしたいと考えるのは自然なことです。しかし、半数以上の働く女性が妊娠・出産を機に仕事を辞めるのが現状です。これは、子育てをすることと仕事をすることが両立しにくい社会の現状があるからです。仕事の時間や内容、子育てをしながら働くことへの職場の理解、仕事をしている間に子どもを預かってくれる施設や人がいるかどうか、など様々な理由が考えられます。それらが明らかになれば、子育てをしている女性が、より働きやすい社会となり、更に子どもを持つことができる社会になると考えます。<助産師・保健師・看護師>信州大学医学部保健学科看護学専攻卒業後、信州大学医学部附属病院にて助産師として勤務。2014年4月より母性看護学領域の教員として勤務中。米山 美希 助手信州大学医学部保健学科看護学専攻卒業、同大学院医学系研究科保健学専攻博士前期課程修了(看護学修士)助産師での病院勤務を経て2015年医学部保健学科看護学専攻着任、現在に至る。鮫島 敦子 助教 この研究が発展することで、妊娠・出産等のライフイベントを経ても女性が働き続けやすい社会になると考えます。また、子育てと仕事が両立できる社会となることは、安心して子どもを産み育てることができ、少子化の改善にもつながると考えます。さらに、女性だけでなくすべての働く人々が仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)を実現することで、多様な働き方にあった生活が実現できます。 助産師は、妊娠・出産・子育てだけでなく、性に関する教育など、女性の生涯にかかわることのできる仕事です。病院などの医療機関だけでなく、市町村の保健センターで活躍している人、養護教諭として学校で働く人など、様々な場所で活躍する機会があります。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る