保健学科_研究紹介2017-2018
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―13―看護学専攻小児・母性看護学領域すべての子どもの豊かな育ちのために―子どもの自律を支えるケア― 2016年の児童福祉法の改正では、全ての子どもが「子どもの権利条約」にのっとる権利を等しく持つことが改めて明記されました。 医療に関わる私たちは、家族や多くの人たちと一緒に、全ての子どもの「豊かな」育ちを支える必要があります。医療の高度化に伴い、生まれた命のほとんどが育つようになった一方で、医療的ケアを必要とする子どもたちも増えています。どのような病気や障害を持っていても、子どもは周囲と相互作用しながら、自らが発達していく力を持っています。私は主に医療的ケアや慢性疾患の幼児の自律過程の研究や、医療機関や在宅での支援を研究してきました。子どもに関わる多くの人と一緒に、子どもの豊かな育ちの支援をしていきたいと思います。 これまでの研究の中で、子どもの自律を考えるひとつのキーワードとして「動機づけ」を捉えました。古くて新しいこの概念は、掘り下げる価値が満載です。子どもは外から動機づけられるだけでなく、自ら働きかけ、相互作用する中で、経験を内面化し、次の行動への動機づけを行います。小さな時期からの子どもの自律に結びつく環境づくりや関わりを考えていこうと思っています。 小児看護は、新生児から思春期まで、現在は成人移行期も含めて激変する時期に関わる領域です。成長・発達や家族看護の知識、小児特有の病態の理解、子どもに合わせたケア技術、家族をはじめ様々な職種、教育や地域との連携が必要になります。深くて面白い!小児看護学研究から広がる未来卒業後の未来像看護学専攻小児・母性看護学領域病気の子どもの経験する体験と、彼らが培うしなやかな強さややさしさを伝えたい!! 子どもが病気になってから経験することを通して、つまずいたり、衝撃を受けたりしながら、育っていく中で、どのようなことを学んでいくのかに関心を持って研究を続けています。お子さんに自分のことを話してもらうためにはまず顔なじみになり、だんだん自分のことを話してくれるようになるように機会をつくり、お話をお聞きしています。聞いたお話から、お子さんたちの経験からの学びがどのように形作られているのかを鮮明に説明することを目標に、研究をしています。 お子さんからお聞きするお話がどれも大事なお話なので、なかなか「もうこれでよし!」とお話を聞くことを終いにできず、とても楽しいけれど、形にするにはまだ時間がかかりそうです。共立女子大学文芸学部卒業後、信州大学医療技術短期大学部看護学科卒業、日本赤十字看護大学看護学研究科修士課程修了、金沢大学医学系研究科博士後期課程満期退学。鈴木 泰子 助教聖路加看護大学卒業。同大学院看護学研究科博士前期課程、博士後期課程修了(看護学博士)。総合病院勤務、大学勤務を経て、2014年本学着任。平林 優子 教授 自分のやっていることにこんなことをやっていていいんだろうかと悩む人や将来に不安をもつ人がたくさんいます。そんなとき、子どもの頃に病気になり、日常の生活が激変し、経験を知ることは、大きな助けになったり、勇気や希望を与えてくれることが多いです。そんな病気の子どもたちの経験を読み解き、人としての生き方への工夫やコツを発見できたら、それを社会に伝えていきたいと考えています。 学生生活の中で起こることから多くを学んでいくことができます。自分の思考を深め、思考や行動のくせも知りましょう。机上の学びだけでなく、日々の生活や人間関係を通して、多くの人と対話をし、生活する力を身につけることが将来の強みにきっとなります。小児看護学研究から広がる未来卒業後の未来像学会参加して街歩きをしたときに見つけた教会の壁。風雨に負けずに凛と立つ品のある姿に、病気の子どもの持つ強さややさしさと同じものを感じて、心が震えた。眺めるといつも励まされる。ゼミのときも、病気の子どものことばを学生さんに伝えている。学会で、NICUから在宅への移行支援の研修会を実施(日本小児看護学会教育委員会)研究結果を盛り込んだ、気管切開をしている幼児の発達や生活の見通しをもつためのパンフレット「だれかのせいにしたりせず、あるがままを受け入れて未来に向けて生きる勇気を、病気は自分にくれたと思う」「自分のことは自分だけでは決められない、家族の気持ちも大事なものだから…」気管切開をしている子どものケアのDVD。家族がケアをする手順だけでなく、研究の結果から、子ども目線のケアのポイント、発達に応じた自律への促しなどを解説に含めた。

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