保健学科_研究紹介2017-2018
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―11―看護学専攻成人・老年看護学領域地域連携による保健医療の解析に基づく先進的な予防医療と健康寿命の延伸 循環器内科で実施された長野県初の大規模臨床比較試験を担当し、心血管疾患の発症や病態について研究してきました。また、長野県北安曇郡松川村と信州大学医学部との地域連携を推進し、青少年のメタボリック・シンドロームの要因を解析しています。平成28年より「医科歯科連携による先進予防医療研究会・松本(D-CAMP・松本)」に参画し、歯科口腔疾患と全身疾患の関連を明らかとしました。毎年開催される松本市健康フェスティバルでは、信州大学医学部附属病院のミニドックを出展しており、医師、看護師、管理栄養士、保健学科の教員と学生が参加しています。地域連携によるビッグデータを活用した保健医療の調査研究により、先進的な予防医療を目指しています。 長寿である一方、1人当たり医療費が低い長野県は、超高齢社会を迎える我が国の近未来モデルです。長野県内の保健医療のビッグデータの解析により、我が国の課題と展望を明らかとし、近未来の保健医療政策に貢献するような研究を目指しています。疾患の発症や再発の予防、発症後慢性期の健康維持に関する効果的な取り組みにより、病気を経験しても健康長寿が達成される未来が期待されます。 超高齢社会の保健医療では、医療機関でも地域でも、専門職連携実践が大切であり、他職種と効果的に連携できる医療者が必要とされています。今後の医療や保健活動を推進する医療者として、社会や時代の変化に即した活躍が期待されます。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像松本市健康フェスティバル・信州大学医学部附属病院 2017年9月看護学専攻成人・老年看護学領域死から生を問いなおす数字でとらえきれない現象をとらえる 自らの死に臨む人や、大切な人を看取って死別の悲しみを体験する人を、社会でどう支えていけるでしょうか。こうした現代社会の死生に関する問題を、「社会学」や「死生学」といった学問を枠組に研究しています。担当科目「医療社会学」では、学生と一緒に県内の終末期ケアの現場を見学し、スタッフの方にお話を伺っています。また、市民団体の活動に参加し、死別体験者を支援する冊子の作成・配布を一緒にしてくれた学生もいます。研究・活動で私が大切にしているのは、数字でとらえきれない個人や小集団の声に耳を傾けること。日頃アンケート調査などの「量的研究」よりも、聴き取り調査などの「質的研究」を行い、人の死生に関する現象をとらえようとしています。上智大学(比較文化学士)、エジンバラ大学(社会人類学修士)、京都大学(人間・環境学博士)卒業後、関西看護医療大学講師、東京大学特任講師を経て、2011年に保健学科に着任。山崎 浩司 准教授静岡県清水市(現静岡市)出身。清水東高校、信州大学医学部卒業。Harvard大学Boston小児病院に留学。循環器内科学の基礎、臨床、疫学研究を経験。教育と研究による地域貢献を目指す。伊澤 淳 教授 社会学も死生学も、多くの人が気づかないことや見たくないことを、直視させてくれる学問です。どんなに平等を目指してもそこに不平等は存在する。どんなに健康に気をつけても、人はいつか必ず死ぬ――こうした社会や人間に関する根本問題について、ハタと足を止めて考え、調べ、行動してみることで、私たちの現在がより鮮明に浮かび上がり、未来がおぼろげに見えてくるのではないかと思います。 医療専門職として働く限り、人の生死にかかわる問題に直面します。また、今後ますます医療が求められる中、業務は多忙を極めます。社会学や死生学による学びは、将来、現場で直面する問題や自らの実践をふり返ることの重要性を思い出させてくれるはずです。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像死別や看取りの困難に共感的で支援的な地域社会をつくるべく、さまざまな背景をもつ有志市民と語りあい、学びあい、協働する。SATシステムを用いた体験型食育(親子で参加する栄養指導)医科歯科連携による先進予防医療研究会(D-CAMP)松本学生と一緒に長野県内の緩和ケア病棟を訪問見学。有志市民・学生と一緒に作成・配布した死別体験者支援の冊子。

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