工学部_研究紹介_2019_日本語版
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【先生の学問へのきっかけ】学部4年生のときは電気化学・表面化学の研究室に配属となり、卒業研究として金属表面の超撥水処理や耐腐食挙動の電気化学的な解析を行いました。その後大学院では現在の研究テーマでもある光触媒の研究室へと移り、人工光合成系関連の研究を行ってきました。ラボスケールで材料をコネコネしていると、大半は大した活性のない「ゴミ触媒」になってしまうのですが、時たま狙い通りor期待以上に面白い挙動を示してくれることもあり、そうした未知の触媒・現象を開拓していく快感に魅入られて今に至っていると感じます。研究キーワード研究シーズ•可視光応答型光触媒/光電極による水分解•光電極表面の多層構造化による高性能化•異種光触媒粉末の複合化による水分解用光触媒シートの開発•1段階光励起で1.23V以上の高光起電力を発電する湿式太陽電池の開発•太陽電池を用いた廉価な水分解デバイスの開発共同研究・外部資⾦獲得実績•半導体-非水溶液界面を利用した高起電力光電気化学セルの研究と人工光合成系への展開(2016-2018年:日本学術振興会特別研究員奨励費DC2)•Model Study for Photoelectrochemical Methylcyclohexane Production from Toluene and Water Using SrTiO3Photoanodes (231st ECS Meeting, Oral presentation)(2017年:触媒学会50周年記念事業若手研究者の海外渡航費用助成)•球状シリコン太陽電池を用いた水分解デバイスの開発(民間企業・東京大学・アブドラ王立科学技術大学との共同研究)受賞歴1.学生優秀発表賞、第34回水素エネルギー協会大会2.優秀口頭発表賞第一位、第37回触媒学会若手会「夏の研修会」3.優秀ポスター発表賞第三位、第38回触媒学会若手会「夏の研修会」社会貢献実績「博士プラクティススクール」において三菱化学と共同研究。(東京大学、2015年)光電気化学・材料化学・触媒化学・⽔分解⽤光触媒/光電極・⾼光起電⼒湿式太陽電池VOC≃ 1.5 V↑高光起電力湿式太陽電池の動作原理、及びXeランプ照射下での発電特性。1段階光励起で1.5 Vもの開放端電圧が得られる。(Angew. Chem. Int. Ed., 54, 27, 7877‐7881, 2015.)↑光触媒微粒子から作製した光電極開発の模式図、及び性能向上前後の光カソードの疑似太陽光照射下での水分解特性。(Sustain. Energy Fuels, 2018, in press, DOI: 10.1039/C8SE00101D.)水分解特性(光電流値・オンセット電位)の改善CBMVBM研究支援部門影島研究室研究から広がる未来再生可能エネルギーの中でも最大の資源量を誇る太陽光エネルギーの有効利用は、人類の喫緊のエネルギー・環境問題の解決に必須であると言われています。一方、太陽光は地域・時間・季節による変動が大きく、時間的・空間的に大きなスケールでの貯蔵・輸送には不向きであるという欠点もあります。そうした課題を解決すべく、影島研究室では錦織研究室と共同して、光触媒材料を用いて水を分解し、太陽光エネルギーを「水素」という貯蔵・輸送に有利な化学エネルギーの形態に変換することが出来る、エネルギー蓄積型の人工光合成系構築に関する研究に取り組んでいます。物質化学科太陽光エネルギーを化学エネルギーへ変換する⼈⼯光合成系の構築影島洋介助教2018年2月東京大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)取得。この間、日本学術振興会特別研究員DC2(2016-2018)を兼任。2018年3月より現職。専門は光電気化学、材料化学、触媒化学。太陽電池・光触媒等を利用したエネルギー変換型の人工光合成系構築に従事。卒業後の未来像「クリーンな」エネルギーデバイスとして燃料電池が注目されて久しいですが、「燃料」となる水素は現状化石資源由来で作られており、完全な化石資源脱却には至っていません。光触媒や太陽電池を用いた水分解(=水素生成)が実用化できれば、太陽光と水のみから水素を得ることが出来、得られた水素は燃焼によって再び水に戻るため、真にクリーンで持続可能な社会の実現に大きく貢献すると期待されています。光触媒の研究では、材料の物性、表面の状態、それらを評価する様々な分析機器の取り扱いなど、多岐にわたる知識・能力が身に付きます。そうした研究活動やディスカッションを通して、論理的な思考と根性を併せ持った人材を育成します。↑光触媒粉末を金属上に固定化した「光電極」の評価風景。生成ガス(水素・酸素)の定量分析も行います。ソーラーシミュレーター光電気化学セル酸化物(白色)硫化物(黄色)セレン化物(黒色)↑太陽光スペクトル(左軸)と各種光触媒の光吸収特性(右軸)。可視光の大部分を吸収可能な光触媒材料の開発は変換効率向上へ向けた重要な課題の一つ。25

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