経法学部研究報告紹介2017-2018
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5応用経済学科応用経済学科政策の成り立ちを学ぶことで、「国のかたち」を考える ストレスをどのように削減すべきかという、ストレス削減の方法に関する研究が専門です。現代の企業で働く従業員には様々な仕事のプレッシャーが降りかかっています。こんな中でストレスが原因で、体調が悪くなったり、精神的に厳しい状態になったりすることがあります。仕事上でどのようなストレスがかかるのか、また、ストレスを削減するためには、どのようなことをすればいいのかに焦点を当てて考えることで、これからの日本人の働き方そのものにも焦点が当たります。その意味では、ストレスを通して、どのような働き方が従業員にとって良いことなのかを問う学問でもあります。 産業政策・中小企業政策や、地球環境対策など幾つかの政策分野を取り上げ、「なぜ、このような政策が出来上がったのか」というメカニズムの解明を目指します。例えば皆さんは、ニュースで聞いたパリ協定のような国際約束が、最近よくソーラーパネルを見かけるようになった…というような身近な社会の変化にどうやって繋がってくるのか、興味が湧きませんか?その過程には、各国間/国内における基本的な政策枠組の検討、個別の法律や規制の立案、予算や税制の折衝など、様々なレベルでの「政治」が絡んでいます。どんな人や集団が、どんな理想や思惑を持って、どのように影響力を行使してきたのかを解明することで、将来のより良い「国のかたち」を考えていきます。 現在は、労働経済学、管理会計の分野の研究者と協力して、女性管理職のストレスの削減に関する研究と、産業クラスターコーディネーターの能力に関する研究を行っています。二つの研究の共通点は、ストレスの高い職場にあることと、仕事上の役割を沢山掛け持ちしている点です。これらの研究から、ストレスの削減と従業員個人の業績の両者を達成できる能力とは何かを探求しています。この能力が発見できれば、今後企業の中で、どのような能力を身に付けるべきかの新たな指針も見つけられますし、この能力の中で、大学生の時期に学ぶことが可能な内容があれば、本学の講義の中にその内容を取り入れることで、より早期に、従業員の能力を上げることが可能になります。 また、ストレス研究は、アンケート調査の分析を用いた内容が多いため、統計的分析を学ぶことが可能です。将来的には、人事部での従業員の管理を円滑にできたり、顧客の心理を分析する消費者心理学の分野に応用が可能です。 今の日本は、従来の政策の枠組みが機能不全に陥って、大規模な作り直し(改革)が必要な分野が多くなっていると言われています。例えば、日本経済の新陳代謝を取り戻すためには、創業や新事業を活発化させる必要があると言われて久しく経ちます。少子化問題などもそうです。相当前から様々な対策が打たれているのですが、社会の「かたち」が変わるところまではなかなか至っていないというのが大方の見かたではないでしょうか。 過去の政策形成過程を研究して、どのような人が、何を狙ってどんな変革を推進し、どのような人が、どういう理由でそれを妨げたり変容させたのかを解明することで、今後の政策形成に役立てていきたいと考えています。 担当教員は、20年近く中央省庁で政策立案を担当してきましたので、徹底的に実学重視です。教室の授業では、具体例をふんだんに使い、演習・ゼミの受講生には、企業・行政の現場の視察や見学の機会も十分に設けます。公務員志望の学生も、民間志望の学生も、自分の将来を考えるヒントを見つけてほしいと思っています。 ストレスの原因や、ストレスによる最も悲惨な結果と考えられる過労死・過労自殺の原因は、長時間労働といわれています。そこで、日本企業の従業員に実際にアンケートを取り、その結果を分析した結果、実はそうではないことが分かりました。過労死の予兆である身体反応と、過労自殺の前兆であるうつ反応は、一般的に良く言われている長時間労働の効果はあまりなく、仕事上の役割を掛け持ちしていることで生じる役割葛藤や、仕事上の役割がわからないことによる役割曖昧性が大きな原因で起こっていることが分かり、長時間労働自体はあまり影響しませんでした。・第二次大戦期・戦後占領期の内閣制度の改革(1998)・中小企業における仕事と育児の両立状況の分析(2006)・廃棄物処理・リサイクル制度の進展(2010)・化学物質審査規制法の制定過程(2015)   など岩田 一哲 准教授遠藤 幹夫 教授三重大学人文学部を卒業後、金融機関での勤務の後、名古屋大学大学院経済学研究科で経済学博士を取得。その後、高松大学講師、弘前大学准教授を経て、2015年に信州大学経済学部准教授で採用され、現在に至る。1997年東京大学法学部卒業、98年同修士課程修了、通商産業省(現・経済産業省)に入省。中小企業政策、金融危機対策、地球環境対策、通商・貿易政策、内閣官房等の担当を経て、2017年より現職。専攻は公共政策、行政学、行政史。CD地球温暖化対策推進法地球温暖化対策計画固定価格買取制度(FIT)国・自治体の補助金地球温暖化対策税制自主行動計画フォローアップJ-クレジット制度・・・政策形成過程(イメージ)国会・与野党電力会社産業界環境NPO国民世論・・・環境省経済産業省研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例ストレスを減らして、より良い働き方を考える 

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