経法学部研究報告紹介2017-2018
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22総合法律学科総合法律学科捜査機関が適正に捜査する仕組みを創出国際政治:グローバルな社会の課題を探究し、解決策を模索する 捜査機関が実施する捜査を規律するルール(法)を研究しています。刑事訴訟法という分野になります。 刑事訴訟法という分野のなかでも、特に、おとり捜査など、対象者に気づかれない状態で行う秘匿捜査を規律する仕組みを開発しています。私の研究の特色は、いかに違法な捜査を抑制するかではなく、いかに適法な捜査を担保するかという視点で、仕組みを構築する点にあります。この視点は、例えば学生が本を読む時間をどう確保するかなど、社会のあらゆる仕組みづくりに役立つものと考えています。 現在では、捜査機関におけるデータの取扱いから転じて、情報リテラシー教育なども関心をもって研究をしています。 貧困の克服や平和の構築、環境問題などグローバルな社会の課題が研究対象です。国境を越えて社会の関係性が緊密化している現代社会では、国や地域社会の問題を考察するためにも他国との比較や他国との関係性に配慮したグローバルな視点が重要です。社会の課題の解決には、問題を共有しルールを決めて、解決に向けた努力を促す社会の仕組みが必要です。豊かで平和な社会を築くためには、様々な国々や人々の協力が欠かせません。しかし、そもそも多様な価値や利害が交錯するグローバルな社会では、問題を共有することさえも難しいのが現実です。グローバルな社会の問題の背景には何があるのか、解決のためには誰がどのようなことをなすべきか、問題解決のための知見や教訓を積み重ねるために研究をしています。 私の研究は、企業や行政の危機管理にも応用が可能なので、これらの組織の研修にも活用されています。 また違法を抑止するのではなく、適法を担保するという視点は、たとえば医療訴訟をおそれて医療の現場が委縮してしまう現象に対しても、応用可能です。医療の現場からは、医療過誤をどう抑制するか、というよりも安全な医療をどう確保するかを考えることが求められているのです。 教育では、長野県警や長野地検の協力を得て、勾留請求をしたり、実況見分調書を作成したりする実習も行っています。実際にやってみることで、身につくことがたくさんあるばかりでなく、今の勉強が社会でどのように生かされているかを知る機会になり、今やるべきことをわかるようになります。その結果、受講した学生たちは、県警や検察庁だけでなく、広く官公庁にも就職しています。法曹を目指す学生にも有益なものとなります。 国際政治の中でも、グローバル・イシューズと東南アジア地域を中心とする新興国の政治が専門領域です。世界の中でもアジアの存在感が増し、日本とアジアや東南アジア諸国は経済的にも密接な関係があります。価値や利害を調整し、社会課題解決の試みを研究する政治研究も様々な国の事例が蓄積されており、特にアジア諸国の事例にも関心が高まっています。アジア諸国から得られた知見が、ヨーロッパ諸国やアメリカでも重要視されると思います。 政治課題を分析するためには、より正確な情報の収集能力、 多角的・複眼的な分析力、論理的な思考力、自分とは異なる主張を理解する多文化主義的能力、情報を共有し発信するためのコミュニケーション能力が重要です。このような能力は、公務員としてまたは民間企業で働くための基礎力でもあります。地域社会の課題解決に尽力できる人材やグローバルな社会で活躍できる人材にも共通の資質です。 社会の課題を克服し持続可能な経済社会を築くためには、社会の統治の仕組み(ガバナンス)が重要です。社会の問題や統治の仕組みは、それぞれの国々や地域の歴史や社会の成り立ちとも密接に関わっています。東南アジア諸国(特にフィリピン、タイ、インドネシア)の経済改革の政策決定過程の事例を分析し、よき統治の条件を考察しています。理念が実社会に反映されるまでの仕組み。県警の協力を得て、指紋採取の実習担当授業でのハワイ大学研修東北研修:防災や災害からの復興はグローバルな課題でもあります丸橋 昌太郎 准教授美甘 信吾 教授社会基盤研究センター長。東京都立大学院(修士(法学))後、信州大学経済学部准教授を経て現職。北海道大学法学部卒業、ロンドン大学(LSE)修士(開発学)、ロンドン大学(SOAS)修士(東南アジア研究)、ロンドン大学(SOAS)博士(Ph.D.)。フィリピン大学(CIDS)客員研究員、信州大学准教授などを経て現職。研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例

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