経法学部研究報告紹介2017-2018
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18総合法律学科総合法律学科環境を守る正義の味方!働くこと・生活することにかかわる法制度を学ぶ 環境を刑罰を使っていかに守るかという環境刑法の研究をしています。刑法は犯罪と刑罰を定めた法ですが、環境を傷付ける行為は、人間の生産活動が中心ですから「犯罪!」という意識は一般的に薄いですね。刑罰も原則は人を対象としていますから生産活動の中心である企業を対象とするのはなかなか難しいです。そこでいきなり刑法ではなく行政刑罰という行政機関の行為(監督、指導など)を先に出したうえで刑罰を科すというような工夫をして環境の保全を図ろうとしています。環境刑法は、日本よりも世界で様々なサンクション(制裁)の形を取り込んで進化しています。どんな形態がより環境保護に適しているかいっしょに考えてみましょう! 法律の中でも、働くときのルールを定める労働法と、生活していく中で病気にかかったり、高齢になったりしたときに、医療給付や年金給付を支給する仕組みについてのルールを定める社会保障法を研究しています。なかでも高齢期の所得をどう保障するかをテーマとして、公的年金や企業年金・個人年金、あるいは高齢期の就労について、比較法的な観点も交えながら取り組んでいます。労働法や社会保障法の分野では、「税と社会保障の一体改革」や「働き方改革」など、数多くの法改正が行われているので、各改正が制度全体の中でどのように位置づけられるのか、その意義や課題を探り、今後の政策策定に向けた議論の素材を提供することを目指しています。 環境刑法の研究は、日本では特別刑法としてあまり活発ではありませんが、ドイツやアメリカでは、各国の社会状況や法制度に合わせて様々な形で発展しています。日本では近年まで意識されてこなかった原子力について、ドイツでは環境犯罪として刑法で取り扱われています。そして経済発展の著しい中国では、環境問題での刑罰の役割は重要なものとなっています。環境の保全には、世界各国が注目しています。それだけに環境刑法は大きな役割をもっているといえるでしょう。 環境刑法は、刑法や刑事訴訟法の理解が前提の応用的法分野です。政策的な面を強く持っており、自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の言葉で説明することを要求されます。そのような思考や行動が身に付けば、自分の人生をしっかり考える能力は十分なはずです。環境刑法だから、環境分野の仕事でなくてはならないわけではありません。未来は未知であり広大な大海です。大海に挑む若者には智慧と勇気があれば十分です。 労働法も、社会保障法も、みなさんの現在あるいは将来の毎日の生活と密接に関係した学問領域ということができます。現行の法制度はどうなっていて、それにはどのような問題があって、どういった改正が必要なのか、あるいは、これまではなかったニーズに応えるためには、新たにどのような制度を創設する必要があるのかを考えることは、家族をはじめ、自分の大事な人を守ることにつながり、端的に役に立ちます。 教育の分野では、研究を通じて交流のある使用者側と労働者側の一流の弁護士の方々に信州までいらしていただき、双方の立場から、現場で労働法がどのように使われているかを講義していただいています。また、労働基準監督官の業務等を実体験する実習も行っており、実習を履修したことがきっかけで労働基準監督官を目指す学生もいます。 他方で、労働法や社会保障法の知識は、公務員になる場合でも民間に就職する場合でもあるいは起業する場合でも、必ず自分の力となります。労働局と組合の全面的な協力を受けて行う労働法務実習の様子です。上:労働災害が生じたときに、労働基準監督官が行う災害調査  を模擬体験しています。下:組合が企業と団体交渉を行うことを模擬体験しています。三枝 有 教授島村 暁代 准教授中央大学法学部卒業、中京大学大学院(法学修士)、名古屋学院大学教授、中京大学法科大学院教授など、信州大学法科大学院教授を経て現職。東京外国語大学外国語学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了(法務博士)、同大学助教・講師、信州大学経済学部准教授を経て現職。中国の南開大学で鄭教授との環境刑法の講演。中国での環境刑法の在り方を討議し、よりよい法制度を検討します。人←公害•人の生命、身体、健康の保護のため刑罰の活用・・・刑法自体の適用(現状の刑罰理論で)生活環境•人を取り巻く生活環境の保護・・・基準が明確な行政行為を前提とする行政刑罰の適用が前提自然環境広大な自然環境をいかなる刑罰理論を用いたら、より有効に自然を保護できるか?サンクションの多様性•環境刑法の対象の拡大化研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像

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