経法学部研究報告紹介2017-2018
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17総合法律学科総合法律学科サービスの提供過程を適切に規律することで社会の健全な発展を支える(民法)環境を保全するための法制度を学び、持続可能な社会の実現を目指す(環境法) 民法、特に契約法と呼ばれる分野の研究を行っています。私人(一般市民や企業のこと)と私人とが契約を通じて一定の取決めを行ったところ、その取決めの実現過程で何かしらの問題を生じた場合に、その問題をどのように解決すべきでしょうか。契約法が扱うのは、こうした問題です。 契約法は、様々な問題を扱う法分野ですが、特に関心をもって取組んできたテーマとして、①当事者が契約目的不到達を理由に契約を離脱できるのはどのような場合か、②企業と個人とが企業の作成した約款により契約をした場合に契約内容の公平さをどのように保つべきか、③サービス提供契約の履行過程をどのように規律すべきか、等があります。 私は、様々な環境問題に対処・改善することによって環境を保全して行くための法分野について研究を行っています。この法分野のことを環境法と言います。「環境法」という名前の法律があるわけではありませんが、環境に関連する法律は数多く存在します。各種の環境法に基づく制度や具体的事例を研究し、その制度の意義と課題を明らかにし、一定の提言を行うことによって、持続可能な社会の実現を目指しています。 私がこれまでに取り組んで来た具体的な研究テーマは、環境法の中でも、特に、①地熱を含む再生可能エネルギーの利用促進、②国立公園制度、③土壌汚染、④船舶に起因する海洋汚染(特に油濁)などです。 これまで、契約というと、契約締結時の合意によりほぼ全てが確定される契約がイメージされてきました。しかし、サービス提供契約の重要性が高まる中で、最近の契約法では、契約時におよそ全ての事項を確定しなければならないわけではなく、むしろサービス提供過程において提供すべきサービスの内容をいかに具体的に特定していくかに関心が集まるようになってきております。 実際に、内閣府の公表する資料によれば、平成12年以降、産業別GDP構成比の7割以上はサービスの提供を扱う産業(第三次産業)が占めるようになっており、サービスの提供に関する契約は現代社会において非常に重要なものとなっています。サービスの提供過程を適切に規律する枠組みを築くことで、私達の社会の健全な発展に貢献することができるように思います。 卒業生の進路は、主に、公務員、金融機関、その他のサービス業です。法曹を目指して進学した卒業生もおります。特に民間企業への就職者は、就職先にあわせて卒業論文のテーマを決めるケースが多く見られます。 経済の発展は私達の生活を豊かにするものとして重要ですが、環境汚染の発生は回避されなければなりません。環境への負荷の少ない経済の発展が図られることによって、私達の社会は持続的に発展して行くと考えられます。最近は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)に関する法制度の日米比較研究に取り組んでいます。こうした研究によって持続的発展が可能な社会の構築に向けて貢献できると思います。 卒業論文における研究テーマとしては、「持続可能な発展概念」「環境権」「廃棄物の不法投棄」「絶滅危惧種の保護のための法制度」「容器包装リサイクル法」「土壌汚染事件に関する裁判例の分析」「環境影響評価制度」「有害廃棄物の越境移動」などが考えられます。 また、卒業後は、地方公共団体(つまり、地方公務員)や民間企業の環境部署、環境関連の研究機関や財団法人などへの就職が考えられます(もっとも、就職先は環境関連に限られるものではありません)。環境問題を取り扱う法律家になることも考えられます。 サービス提供契約以外では、約款による契約をいかに規律すべきかという問題に興味があります。これまでに、クレジットカード契約におけるカード会社と加盟店間の約款を取上げ、その問題点を検討したことがあります。約款に不明確な条項がある場合にどのような解釈方法が採用されるべきかという問題や、公平性に疑いのある条項について個別的な合意を通じてその条項に対する制限を免れるためには何が必要かという問題にも取組んだことがあります。・船舶や洋上掘削施設に起因する油による海洋汚染(「油濁」といい、地球環境問題の一つになります)に関する国際的な事故(日本国内の事故を含む)(例えば、エリカ号事件、プレステージ号事件、メキシコ湾原油流出事故、ナホトカ号事件など)を取り上げ、油濁事故から生じる法律上の問題点を研究して来ました。・温泉発電を活かした持続可能な温泉地(土湯温泉、小浜温泉など)の形成に関わる計画論的研究(共同研究) 依頼人の指図と弁護士の提案を通じて弁護士の提供すべき法律サービスの内容を具体的に特定するプロセスを示したもの。依頼人の意思と弁護士の判断が対立した場合にはどう調整すべきか?左上:油濁事故の現場の写真中:環境法が目指す社会のイメージ図右上:地熱発電所の写真、右下:廃棄物の不法投棄の写真栗田 晶 准教授小林 寛 教授慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科前期博士課程修了、後期博士課程単位取得退学。信州大学経済学部専任講師、准教授、信州大学大学院法曹法務研究科准教授を経て現職。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、チューレーン大学ロースクール・エネルギー・環境法修士課程修了、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。長崎大学環境科学部准教授などを経て、現職。持続的発展が可能な社会低炭素社会自然共生社会循環型社会環境汚染低減型社会研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例

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