人文学部_学部案内2019
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33とです。難問に向きあって, 問いを解明する, 研究のフロンティア開拓の瞬間こそ, 学生にとっては臨場感ある学びの過程なんですよね。 もう1つは「実証を通じた理論形成」です。魅力ある理論には, いわば現実が透明になるような感覚を抱かせる力があると思いますが, その理論を形成するために, 現実との往復(実証研究)が欠かせません。——社会学は現場重視という印象を受けました。——現実の社会に生じる現象や問題を研究対象とするので, そう映るかもしれない。でも歴史学が史料を, 文学がテクストを, 火山学が噴火という現象を出発点とするのと同じで, 科学に共通の態度ですよ。確かに社会学はアプローチの仕方がさまざまです。数理モデルをつくって検証するスタイルもあれば, 過去から現在までの女性誌を読んで「理想の女性」像がどのように変化したかを調べるなんていうスタイルもあるし, 私のように現地に入り込んで問題の解明と解決をめざすスタイルもあります。——いろいろなんですね。——その反面, 誤解を受けやすい。「何でもあり」と解釈されてしまうのも社会学です。間口は確かに広いんだけど, 対象や手法を様々にしつつ「社会」を考察の基軸に置く。この点ははっきりしています。ところが, 社会って何? このイメージがじつに多様で, 学生にとってはピントが合わせづらいかもしれない。理由はいくつかあるでしょう。まず, 現実の社会は重層的でいろんなスケールの社会が入りくんで, 境界がわかりにくい。家族のような小集団もひとつの社会だし, 「日本社会」という時には国家を前提にするけれども, 定住外国人は? とか。次に, みんなは義務教育で「社会科」という科目を習うけど, あれ実際には地理・歴史・公民ですね。かろうじて高校の「現代社会」が社会学に近いかな~と思える程度。しかも知識の詰め込み。一断面しかとらえていないのに「社会」を学んだと思いこまされている。——確かに, 受験で選んだ科目しか勉強した記憶ないです。——最後に突然ですが, 自分は「社会人」だと思う? ——ここで逆質問ですか。うーん…社会人というと微妙? ̶茅野̶茅野̶茅野̶
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