人文学部_学部案内2019
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27From Professors研究室から6 | From Professors 6一冊の書物がそこにあることの意味を、信州大学人文学部 日本言語文化コース 准教授白井純 Jun SHIRAI様々な視点から考えてみたい。日本語学とはどういう学問なのですか?——日本語学は, 日本語の仕組みや成り立ちを明らかにすることを目的としていて, 言語学の一部門を構成しています。日本語学といっても正しい日本語を学ぶことが目的なのではありません。現代語を対象とするのか, 古典語を対象とするのかでも研究方法が違います。現代語であれば方言調査のためにフィールドワーク(実地調査)を行いますね。古典語ではあいにく藤原定家や本居宣長に突撃インタビューするわけにはいかないので, 文献から当時の日本語を再現しようとします。過去の文献を扱う学問を「文献学」といって, 哲学や歴史学の研究とも重なる部分が大きいですね。——先生が日本語学に興味をもったきっかけは?——僕が興味を持っているのは, 16世紀から17世紀にかけて, 日本でキリスト教を布教したイエズス会宣教師たちが出版したキリシタン版です。キリシタン版にはよく知られた「天草本平家物語」など日本の文献もありますが, 中心は宗教書で多くはヨーロッパに原典をもつ哲学書・神学書の翻訳です。ですから内容を正しく理解するためには, ヨーロッパの歴史・哲学・思想・宗教などの知識が必要なのですが, はじめは, 言語よりもそうした文化的な側面, とくに宗教に興味があって, キリシタン版にも関心を持ちました。̶白井̶白井

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